60代になると虫歯になる人が増えます。虫歯によって歯が抜け、入れ歯にお世話になることも……。本記事では医療法人社団アスクラピア統括院長の永田浩司氏が、加齢とともに減少する唾液によってもたらされる口腔内への影響とその対策方法について解説します。
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60代で「虫歯の人」が増える怖い理由…よだれは「多いほうがいい」【歯科医師が解説】
唾液の分泌量を増やすには?
加齢による唾液の減少を止めることは難しいですが、分泌量を増やす方法はあります。1つが唾液腺のマッサージで、誤嚥性肺炎予防のためなどに介護現場でもよく行われるものです。唾液が分泌される3つの唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)をマッサージします。
【唾液腺マッサージのやり方】
耳下腺…3本の指をそれぞれ頬に当て、耳の下(上の奥歯あたり)をゆっくりまわす。
顎下腺…両手の親指を顎のエラの下の部分に当て、押す。
舌下腺…両手の親指を顎の下に押し当て、ぐっと押し上げる。
このマッサージを習慣にしましょう。筆者は「テレビを見ながらでもいいので、時間のあるときにやってください」と患者さんにはお伝えしています。大変シンプルな方法ですが、梅干しを思い浮かべるのも効果があります。キシリトールガムを噛んだりするのもいいでしょう。
また、唾液の分泌は自律神経の影響を受けやすく、ストレスが溜まるなどして交感神経優位になると、ネバネバした粘液性の唾液が増え、分泌量が減って口の中が乾いてしまいます。一方、リラックスしているときなどは副交感神経優位になり、サラサラとした漿液(しょうえき)性の唾液が増えて口の中も潤います。つまり唾液の分泌量を増やしてお口の環境をよくするためには、メンタルヘルスも大切だということです。
もし、唾液の分泌量に不安を感じているなら、「口腔機能低下症」の検査の1つとして唾液量を調べることができます。口腔機能低下症の検査については、2022年4月より保険治療の適用年齢が65歳以上から50歳以上に引き下げられました。
実は唾液の減少は入れ歯の安定にも影響します。入れ歯は唾液を介在して口腔内の粘膜に吸着しているため、唾液が減ると入れ歯治療のリスクも高まります。これはブリッジ、インプランドも同様です。こうした影響も考えて、口の中の渇きが気になったら早めに歯科を受診することをおすすめします。
永田 浩司
医療法人社団アスクラピア統括院長