寝たきりの人や高齢者が利用するものというイメージが強い「在宅医療」ですが、実は、「以前より動くのが少しつらいかな」と感じるくらいがサービスを利用する一つのタイミングだと言われています。コロナ禍での診療控えもあり近年注目度が増している在宅医療について、『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)の著者で在宅医療専門医の中村明澄氏が詳しく解説します。
訪問診療は「月額5,200円」で利用可能な場合も…意外と知られていない〈在宅医療〉の真実【専門医が解説】
がんの終末期には早めに在宅医療を始めよう
がんの終末期は急に容態が悪化することが多いと前にも述べました。そのため、まだ自力で通院できるうちに病院の主治医や看護師から在宅医療をすすめられることがあります。
病気によって、病状の段階はかなり違います。図5をご覧ください。がんは心・肺疾患末期や認知症・老衰等と比べて、最期の2カ月ぐらいで急激に機能が低下するのが特徴です。
がんの終末期では、「以前より動くのが少しつらいかな」と感じるぐらいが在宅医療を開始する一つのタイミングと覚えておいてほしいと思います。本当に動けなくなってから在宅医療の体制を整えようとしても間に合わないことがあるからです。
在宅医療には寝たきりや高齢者の人が利用するものというイメージが強く、まだ動けるうちは「在宅医療をお願いするほどじゃない」と思うかもしれませんが、病院からすすめられたら通院と並行して在宅医療もスタートさせておきましょう。いったん在宅医療が始まったら、これまで通っていた病院に行ってはいけない、というわけではありません。病院の主治医と在宅医療の主治医との2人体制で対応することも可能です。
在宅医療なら、いつもの薬で痛みが取れない場合に夜中であっても電話で相談できますし、薬の調整もできます。もし在宅医療の話が出たら、前向きに考えてみることをおすすめします。自分の病状の段階が今どこかを知って、後悔しない選択をしてほしいと思います。
中村明澄
緩和医療専門医・在宅医療専門医/医療法人社団澄乃会向日葵クリニック 院長