「人生100年時代」の現代において、老化は避けられない問題となっています。今日から実践できる「身体と脳を若返らせるトレーニング」を見ていきましょう。『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)の著者で医師の霜田里絵氏が、詳しく解説します。
背筋を伸ばして“ナルシスト”的に鏡を見よう
毎日の「背筋伸ばし」も不老脳をつくるのに役立ちます。脳は視覚、聴覚、触覚などを通して外部からの情報を受け取り、それらを総合的に判断して筋肉に指令を送り、全身のコントロールをしています。脳は司令塔として、指令の実行役である筋肉と連携し、たくさんの情報をやりとりしているのです。
この情報のやりとりは脳から筋肉だけでなく、筋肉から脳に向けても行われています。背筋をスッと伸ばすことで、腰部を構成する筋肉群が刺激を受け、脳にいい影響を与えるのです。
姿勢は、認知症の予防においても重要です。70代以上であっても、背筋が伸びて姿勢のよい方は、その後の長い期間、認知症の心配が少ない印象です。私の担当する100歳の患者さん(女性)は、毎日、背中の下に枕を入れて背筋を伸ばしたり、食事のときに横に鏡を置いて自分の姿勢を確認したりしています。100歳ですから少々の不調はありますが、認知症はなくとてもお元気です。
人間は背筋を伸ばすより、丸めているほうがずっと楽にできています。意識しないとすぐに体が丸まってしまい、猫背になりがちです。日常生活ではどんなときも背筋をすっと伸ばし、よい姿勢を保つことを心がけましょう。人と話しているとき、食事のとき、テレビを見ているとき、机に向かっているとき、本を読んでリラックスしているとき――。ナルシストと思われても気にする必要はありません。鏡を置いて確認するくらいでちょうどいいのです。
背筋を伸ばすのは、私たちが思う以上に筋力が要ります。下腹部や椅子に面している骨盤底部の部分に力を入れることを意識すると、さらにいい筋力トレーニングになります。余力のある人は次のトレーニングもしてみましょう。
壁に向かって立ち、両手を上げて壁につけ、背筋を伸ばしてみてください。この状態を10〜15秒保ちます。背中と腰の力を緩め、再度スッと背筋を伸ばしてみてください。これを朝・昼・夜と5〜10回ずつ行います。