配偶者と離別、または死別してしまった場合、再婚を考える人も少なくありません。再婚をした場合は、いずれ発生する「相続」のためにも、前妻と後妻だけでなく、それぞれの「子ども」への対応が重要になる、と「税理士法人レガシィ」代表税理士の天野大輔氏は言います。天野氏の著書『相続でモメる人、モメない人』(日刊現代)より、再婚後の注意点について、詳しくみていきましょう。
遺産相続でモメがちな「熟年再婚」だが…回避するために必ず知っておきたい、〈前妻の子〉と〈後妻〉の関係がうまくいく「秘訣」【相続専門税理士の助言】
「遺言を書いてくれ」と迫られることも……
60代以降で再婚する場合、前妻の子どもとのコミュニケーションが特に大事になります。多くの場合子どもたちはすでに独立していて、再婚相手と一緒に暮らすことはないでしょうから、つい疎遠になりがちです。
前妻の子どもたちからすれば、父親が後妻に肩入れしてしまい、自分たちのことなど忘れてしまったと感じます。財産もすべて奪われてしまうのではないかと考えて、「遺言を書いてくれ」と迫ることもあるでしょう。
だからこそ、子どもたちの心配が募る前に遺言書を書いて、親の意思をしっかりと示しておくのがいいと思います。再婚した場合の相続人は配偶者と前妻の子どもです。後妻との間に子どもが生まれたときには、その子どもも相続人になりますが、後妻の連れ子は相続人ではありません。後妻の連れ子にも相続させたい場合には、養子縁組することで相続人にできます。
こんな事例がありました。先妻を亡くした後、再婚していたBさんが亡くなりました。相続人は長男、次男、長女。そして後妻とBさんの養子となっている後妻の長女の5人です。
前妻の子どもたちにしてみれば、「お母さんがかわいそう」との気持ちになりがちです。実際に前妻の長女の口からは、そうした言葉がしばしば出てきました。おそらく「おかあさんはあれだけ苦労したのに、いきなり出てきた後妻に半分の相続権があるなんて、冗談じゃない」との気持ちだったのでしょう。
その気持ちはわかりますが、母親が亡くなったことを変えることはできません。であれば、「変えられること」に目を向けてプラス思考で考えることも大事です。妻を亡くした父親がひとりのままでいるべきというのは、かわいそうです。
プラス思考で後妻を見れば、晩年の父親の面倒をよく見てくれたとの感謝の気持ちが生まれるかもしれません。
このケースの場合、法定相続分をベースにすると、後妻が2分の1、前妻の子どもと後妻の子どもの計4人が残り2分の1を等分することになります。
ここで前妻の子どもからは「婚姻期間は私たちのお母さんのほうが長いのだから後妻はもっと少なくていいはず」との声が出てくることもあります。