事業を子どもに引き継ぐ場合の注意点

事業を営んでいる場合には、子どもに継いでもらいたいと考えるのが親心です。しかし、事業を引き継ぐのは大変なことです。そのため、後継者ばかりに気を配り、他の子どもへの配慮がおろそかになりがちです。

たとえば、兄、妹の2人の子どもがいる場合に、長男が後継者として父親から経営について学んでいる姿を見ていると妹は「なぜ、兄ばかり……」と不満を抱きます。事業を継がない人には、贈与をするなどしてバランスをとるのが有効です。

この場合も父親よりも母親のほうが気づきやすいので、母親目線が大切になります。母親が事業に関わっていないとしても、子どもたちにどう配慮するかは夫婦で話し合ったほうがいいでしょう。

実際に事業を引き継ぐ場合には、会社の株式(自社株)を相続することになります。上場している株式の場合は、証券取引所を通じて売買されていますから、時価をベースに相続税評価額を計算できます。しかし、非上場の会社の株式の場合には、時価がありません。そこで評価する方法が主に4つあります。

①類似業種比準方式

②類似業種比準方式と純資産価額方式の併用

③純資産価額方式

④配当還元方式

どの方式を使うかは、非上場の株式を取得する人が同族株主かどうかで決まります。詳しい説明は省きますが、父親がオーナーであれば、通常は①~③の方法で評価します。①~③のどの方式を利用するかは、会社が財産評価基本通達で決められている大会社、中会社、小会社のどれに区分されるかによって決まります。

事業を営んでいる以上、自社株を売却することは容易にはできません。一方で自社株の評価額が高額になることも少なくありません。そのため、自社株対策を怠ると多額の相続税がかかってしまいます。

オーナー経営者の場合、個人名義の財産は自宅のみで、他の財産のほとんどは会社名義のような場合も多いでしょう。その場合、自社株対策をしていないと、多額の相続税が課せられても納税資金がないという状態になってしまい会社の経営にも影響が出てしまいます。



天野 大輔
税理士

税理士法人レガシィ