ペット業界にもICT化の波
ICTという用語をご存じでしょうか? ICTとよく似た用語で「IT」がありますが、ITとICTはほぼ同義語です。日本政府は、日本型IT社会の実現を目指す構想を、2004年に改正したころからICTという用語を使っており、これを機にITに代わってICTが広まり始めました。ICTは、「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を使ったさまざまなコミュニケーションのことを指します。
人間の医療分野でも活用されており、離島などの医療過疎地域への遠隔診察や、通院困難者への負担の少ない診察が可能になりました。実は、ペットの診療や薬の処方にもICTの波が押し寄せています。
動物たちにとって、動物病院への通院は遠方への移動や、待合室など慣れない環境への対応といったストレス要因に。また、珍しい病気に罹ってしまうと診てくれる病院が近隣にないこともあります。そのため、遠隔で受診ができるサービスは飼い主にとってもペットにとってもメリットが多いです。
株式会社みるペットの運営する「みるペット」というサービスや、クレジットカード会社のクレディセゾンの「セゾンのペットオンライン診療」では、予約からビデオ通話による診察、会計まですべてオンライン上で完結。さらに、薬も郵送で受け取ることが可能です。
また、「病院に行くほどではないけど心配なことがある」「病気ではないけど夜鳴きや排泄などの悩みがある」といった悩み相談を受け付けるオンライン相談も利用できるのが嬉しいポイントです。
ペット業界のICT化は医療分野だけに留まりません。最近では、保護犬猫との出会いもオンライン上で行われるようになっています。株式会社PETOKOTOが運営する「OMUSUBI」には、審査を通過した200以上の保護団体が登録されており、審査制マッチングサイトでは日本一の規模です。
このサイトには相性診断の機能もあり、自分のライフスタイルや好みに合った保護犬猫を見つけられるのもポイント。リアルのイベントよりも多くの母数の動物と出会えるということもあり、これまでよりもマッチ率の高いワンちゃん、ネコちゃんとの出会いが期待できるでしょう。
ペットテックの今後に期待すること
ペットの家族化が進むなか、ペットテック事業は急拡大しています。技術の進歩によって、これから各家庭にペットの世話にかかる手間や時間はどんどん短縮され、お互いが快適に過ごせるように変わっていくでしょう。コミュニケーションや健康管理の面は前述のデバイスがサポートしてくれます。開発がさらに進めば、機器の精度は上がり、対応する種類の動物も増えていくと予測されます。
日々のお世話に関しても、自動給餌器やシッター代わりのおもちゃだけでなく、オランダでは排泄物を処理してくれるドローンが開発されています。こうした技術を用いることで、愛犬、愛猫が、人の手間は最小限ながらも、衛生的で健康的な環境で暮らしていけるようになるでしょう。
本来、動物を飼うというのは、その動物の命を任せてもらうことであり、手間を惜しむべきではないのかもしれません。しかし、人間も毎日世話を続けていると、体調が悪くてどうしても休みたい日、お世話疲れが溜まっている日が出てくることは致し方のないことです。
ペットテックは飼い主の負担を減らすことで、ペットとよりよい関係性を保つことに貢献していくはず。ペットと飼い主がよりよい関係を築くことができれば、飼育放棄や殺処分につながるケースも減少するかもしれません。
[筆者プロフィール]
吉田康介(フリーライター)