資産分割協議に「配偶者」は参加したほうがいい?

相続が発生したとき、相続人ではない配偶者に相談したほうがいいか、これは悩ましい問題です。結論としては、遺産分割協議に相続人の配偶者が加わるとモメやすくなりますから、配偶者は参加しないほうがいいでしょう。他の相続人が「姻族なのに介入してきて、自分に有利にしようとしているのではないか」と疑心暗鬼になってしまうので、慎重に考えたほうがいいのです。

ただし、農家などで長男夫婦が同居しており、親と長男夫婦の生活が一体化している場合には、配偶者にも相続が大きく関わるため、参加してもよいでしょう。

たとえば、自宅の土地の相続税評価額を一定面積まで8割減にできる小規模宅地等の特例があります。相続人が同居しているなど一定の条件を満たす場合に利用できますが、相続税の申告まで自宅に住み続けていることも条件となります。

この場合、同居している長男の配偶者の生活にも影響します。このように直接影響がある場合に限っては配偶者が参加してもかまいませんが、そうではない場合には、できるだけ参加しないほうがモメずにすみます。

なかには、「遺産分割の経過についても配偶者には一切話さないほうがいい」とアドバイスする専門家もいますが、そうは思いません。分割協議はきょうだいなどの相続人のみで極力行い、その内容は家に帰って配偶者に報告するのがいいでしょう。

家や土地を売却するならいつがベストか

相続した家や土地を売却する場合、相続後にすぐに売却するのと、相続からしばらく経過してから売却するのではどちらが有利かを考えてみましょう。

答えを先に紹介すると、相続後すぐに売却したほうが相続後に困りません。

一つ目の理由は、不動産を売却した際の売却益にかかる譲渡所得税の優遇があるからです。相続税の申告期限から3年以内に相続財産を売却した場合は、相続時に支払った相続税の金額を売却した資産の取得費に加算することができます。取得費が増えた分、譲渡所得税は軽減されます。

二つ目の理由は、後で嫌な思いをする可能性があるからです。相続税の支払いのために土地を手放した場合は、周囲から批判されることはないでしょう。しかし、相続から5年が経過した時点で売却したらどうでしょうか。「事業に失敗したんじゃないか」「先祖に申し訳ないだろう」「親の資産でぜいたくな暮らしをしたからではないか」──と無責任なことを言われ、嫌な思いをする可能性が高くなります。

ですから、いずれ売却することが決まっているなら、相続後すぐに売却したほうがいいのです。



天野 大輔
税理士

税理士法人レガシィ