意図せず「社会現象」と化した“大谷翔平”

大谷と同じ1994年生まれのバッド・バニーは、英語ではなくスペイン語の歌詞にこだわるという、グローバルな成功を収めたラテン系ミュージシャンとしては異例のスタイルを貫いている。

アメリカや英語圏の文化に迎合するのではなく、自身が生まれ持つ文化的アイデンティティを前面に出しながら世界的に成功を収めた点は、大谷が変にアメリカナイズされることなく「日本人」のまま活躍している姿にも通じる。ちなみにバッド・バニーは大の日本好きとして知られている。

たとえば「与那国」をテーマにした曲を発表したり(曲名はズバリ「Yonaguni」)、マイアミで日本食レストラン「Gekko(月光)」をオープンしたりしている。バッド・バニーが大谷について歌ったのは、彼が親日家であることと関係があるのかもしれない。

純度の高いラティーノ文化をアメリカで大ヒットさせたバッド・バニーと同じく、アジア人の大谷はアメリカでは「人種的マイノリティ」のレッテルを貼られる。アメリカで近年、黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター運動」や女性の人権を訴える「#Me Too運動」が盛り上がったことは記憶に新しい。

人種や性的マイノリティへの差別撤廃を訴えるリベラルな価値観が支配的な今日のアメリカで、大谷の活躍は「アジア人アスリートの成功」という文脈で語られることは避けられない。

そういう意味でも大谷の存在は、本人が意図せずして「社会現象」になってしまっている。

内野 宗治

ライター