訪問介護サービスを「要介護状態」にならないと受けられないと思っている人は少なくないでしょう。国が定める「事業対象者制度」を使えば、早期から様々な介護サービスを受けることができます。しかし、その利用状況は自治体によって異なるようで……。本記事では、理学療法士の上村理絵氏による著書『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)から、事業対象者制度について解説します。
「新宿区」よりも「横浜市」のほうが圧倒的に少ない…デイサービスの利用者数、市区町村ごとに大きな差が生じる根深い原因【理学療法士が解説】
事業対象者認定※の取り組みや扱いは自治体で異なる
事業対象者認定は必ずしも積極的に活用されているとはいえないのが現状です。その理由の1つには、要介護認定が国の制度であるのに対して、事業対象者認定が市区町村の事業であることが挙げられます。
※基本チェックリストを実施した結果、日常生活における何らかのリスク(危険)があると判定された方を、市区町村が「事業対象者」として認定されます。 認定された方には、「事業対象者」と印字された介護保険被保険者証が発行されます。
市区町村の事業であるがゆえに、それぞれの自治体によって事業対象者認定に取り組む姿勢や扱いが異なり、なかには事業対象者認定にまったく前向きでない自治体もあるのです。
「新宿区」と「横浜市」の格差
たとえば、私たちが運営するリハビリ特化型のデイサービスリタポンテの店舗は、新宿区と横浜市に計3店舗があります。新宿の店舗では、事業対象者認定を利用して、介護予防のためにリハビリに通われる方が大勢いらっしゃるのです。ところが、横浜市の店舗のご利用者には、事業対象者認定を利用している方がどなたもいらっしゃいません。
新宿区とのあまりの違いに驚き、このことについて、何人かのケアマネジャーと話をしてみると、「絶対に何かよくないところがあるはずだから、最初から要介護認定を申請すればいいんですよ」「えっと……事業対象者認定っていうのは……そういう制度があることは知っていますけど、実際に利用したことは一度もないんですよね……」などという言葉が返ってきます。
高齢者のご家族が、直接、区の窓口で事業対象者認定について尋ねても、「いや、それはできません。どこか悪いところがあるはずですから、要介護認定の申請をしてください」と、窓口の担当者に対応をされたそうです。