訪問介護サービスを「要介護状態」にならないと受けられないと思っている人は少なくないでしょう。国が定める「事業対象者制度」を使えば、早期から様々な介護サービスを受けることができます。しかし、その利用状況は自治体によって異なるようで……。本記事では、理学療法士の上村理絵氏による著書『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)から、事業対象者制度について解説します。
「新宿区」よりも「横浜市」のほうが圧倒的に少ない…デイサービスの利用者数、市区町村ごとに大きな差が生じる根深い原因【理学療法士が解説】
事業対象者認定は国が定めた制度
事業対象者認定は市区町村の事業とはいえ、その制度は、厚生労働省、国によって定められたものです。しかも、平成26年の法改正で、要支援状態のさらに手前の未病の高齢者を対象に、介護予防を行う意義を認めて制定された経緯があります。
それにもかかわらず、市区町村の行政が独断で事業対象者認定を活用していない可能性があるかもしれないのです。行政の対応に差を感じる出来事でした。
何よりも、事業対象者認定によってリハビリが受けられれば、身体機能の維持・改善に直接的に役立つのはもちろん、高齢者が早い段階で自分の体の状態や動かし方について理解を深められます。それが日常生活にも生かされることで、要介護状態、寝たきりの防止によりつながりやすくなるはずです。
リハビリのハードルを下げるためにも、ケアマネジャーや市区町村の担当者には、事業対象者認定の積極的な活用をして、要介護者を増やさない、寝たきりを予防していくことを強く望みます。皆さんも、活用ができないかどうか、ぜひ自治体に聞いてみてください。
上村 理絵
理学療法士
リタポンテ株式会社 取締役