リスクにさらすのは、自分自身? それともお金?

その他、AIの台頭によって予想されるものとして、サラリーマンのみなさんが簡単に転職する時代になる可能性が高い、という点があります。

日本的経営が通用しなくなり、ジョブ型雇用を開始する大企業が増えているという背景もありますが、ビジネスに関する意思決定をAIが適切に行うことで、ビジネスに伴うリスクをある程度測定できるようになります。そうすれば、リスクを取りつつ事業を起こすというハードルは、いまよりずっと下がるでしょう。

現代の資本主義とは「リスクを回避したがる者が提供する価値を、リスクを取ってもいいと思う者が吸い上げる」という、経済循環の仕組みです。つまり、リスクを取る企業オーナーや株主が、リスクを回避したがるサラリーマンの価値を吸い取るシステムなのです。

ですが、AIが適切なリスク評価を行うようになると、リスクを取らないことはビジネスとして間違いである、ということが明確になります。つまり、従来のように「サラリーマンとして安定的に雇われて働く」という考え方は、AIによって否定されてしまうのです。

そうなると、リスクを取って起業する若者が増えるでしょう。若者がリスクにさらすのは〈自分自身〉です。新事業に失敗したらやり直すことになり、会社をクビになったら転職することになります。収入が安定せず、生活できなくなるリスクが伴いますが、それでも、NISAに投資する資金のない20代の若者たちがリスクを取って稼ごうとすれば、自分自身に投資するしかないのです。

ならば、50代はどうでしょうか? この年代になれば抱えるものも多く、自分自身をリスクにさらす勇気が出ない方も多いと思います。

その場合は「自分のお金」をリスクにさらす、という選択肢があります。リスクを取ることでお金を増やすのです。

たとえば、銀行に預けているお金をNISA口座に移し、金融資産に投資する、といったことが、リスクを取ってお金を増やす、ということになります。

もしここでAIを活用する企業の株価が上がれば、利益になります。転職を考えるより先に、NISAへの投資を考えるのも、選択肢のひとつだといえるでしょう。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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