見つけた有望株を比較検討する

四季報を1冊読破すると、有望株を数十銘柄は見つけることになると思う。次にすべきは、これらの有望株同士の比較、さらに既に保有している銘柄との比較だ。それらの比較の結果、選りすぐりの数銘柄だけを購入するようにする。この最後の選別によって投資力が養われるのである。

整理すると、「四季報で有望株を探す→ホームページなどで詳しく調べる→他の有望株や保有銘柄と比較する→株式の購入に踏み切る」という手順になる。

「SNSやネットの掲示板で話題になっている株を買う」といった初心者が陥りがちな投資行動との大きな違いは、深さと広さだ。初心者はどうしても視野が狭くなりがちで、話題になっている噂のようなものに意識を集中させてしまう。そうではなく、幅広く銘柄を調査して、有望株については深く研究した上で他の銘柄と比較検討するという手順を身に付けよう。

割安さや成長性の観点から何の興味も持てないような銘柄については、特に時間をかける必要はない。パッパ、パッパと読み飛ばして時間を節約しよう。もしかすると、読み飛ばした中にも大きく値上がりする銘柄があるかもしれないが、「ご縁がなかった」くらいに思って執着しないことだ。

四季報通読の注意点

最後にいくつか注意点を挙げておきたい。まず、各社の四半期決算が発表されてから四季報が発刊されるまでには1ヵ月かそれ以上の時間差がある。データの新鮮さという観点からは価値が低く、短期トレードには向かない。あくまで中長期投資を前提にしてほしい。また、同じ理由から発売直後に気合を入れて誰よりも早く読破するという努力も空しい。

1ヵ月以上かけて読破しても別に問題ないし、購入候補を選んでおいて、次の四半期決算の内容を見てから買うという判断でも、間に合うケースがある。

大きなサプライズでもない限り、業績の反映やそこから生まれる割安さの是正といった株価の変動は、決算発表の直後に瞬時に解消されるものでもない。数か月がかりで徐々に修正されるケースも多い。素早さよりも正しく見る目を鍛えることが重要である。

奥山 月仁
会社員投資家