大多数とは逆方向を見て「平均回帰」を利用する

ピーター・リンチは次のように言っている。

「私が何より避けたいのは、超人気産業のなかの超人気会社である。(中略)人気産業を次々と追いかけて投資したりすれば、すぐに生活保護のお世話になるだろう」

私もピーター・リンチに倣って、人気企業ではなく、不人気企業に多く投資してきた。市場ではなかなか話題にも上らない、冴えない企業を買っておくと、時間が経過し実績を積み上げるにしたがって、次第に市場から正当な評価を受けるようになる。これにより低評価から高評価への変貌による株価上昇が期待できるのである。

大多数が投資する人気企業には目もくれず、大多数が相手にしない母集団にばかり賭ける行為は、当然のことながら、市場平均からはかけ離れた結果を与える。理屈から言うと、極端に失敗するか、極端に成功するか、そのどちらかの可能性が高まる。

ただ、既に見向きもされない不人気企業がさらに不人気になる可能性は低く、しかも、実力があって業績が上向いているような状況では、市場平均以上に勝ちを手に入れられる可能性のほうが高くなる。

反対に長年業績が拡大し、人気が人気を呼び、既にとても高評価を得ている企業への投資は危険だ。人気か業績のいずれか一方、もしくはその両方が突然崩れるリスクが高い。私は、そのような株への投資を避けてきたし、もし保有株がそういう状況になったなら、早めに売却することにしている。

この戦略がうまくいく根拠は、統計学で言うところの「平均への回帰」だ。平均への回帰とは次のような傾向を指す。

ある特徴的な集団、例えば、昨年、絶好調だった野球選手や絶好調だった企業、あるいは反対に、前回のテストの成績が普段と比べて極端に振るわなかった絶不調の学生ばかりを集めて、その後の成績や業績を調べると、絶好調だった野球選手や企業は翌年以降、以前ほどの結果を残せないケースが多いのに対し、前回、結果が振るわなかった学生は次のテストで成績を回復させるケースが多い。

このように正にせよ負にせよ「一時的に極端な結果を残した集団は、その後の成果が平均値に近づいていくという現象」を、平均への回帰あるいは平均回帰という。つまり、不人気側・不運側に平均値から大きく外れた銘柄ばかりを投資対象とすることで、市場平均以上のパフォーマンスが狙えるのだ。