腸内環境と老化の関係は?

――ここ数年、腸活がブームです。腸内環境と老化の関係について教えてください。

内藤裕二教授(以下、内藤):京都府立医科大学の研究グループを主体とした京丹後長寿コホート研究では、京都府京丹後市の65歳以上の住民を対象に健康診断を行いライフスタイルや食生活、そして腸内細菌の調査を行ったところ、高齢者の血管年齢が驚くほど若いことがわかりました。京丹後市の高齢者は、イモ類や野菜など食物繊維が多い食材を積極的に摂り、たんぱく質は大豆、魚が中心でした。さらに、腸内細菌叢を京都市の住民と比較すると京丹後市の住民では酪酸を産生する菌が多いことがわかりました。これは腸の若さを示す指標の1つです。

長寿を保つ食習慣は?

――腸を若く保つ食習慣について教えてください。

内藤:京丹後市の住民は、たんぱく質を大豆製品や魚から摂取しており、肉はほとんど食べていません。牛、豚、羊などのレッドミート(赤肉)は腸の老化を促進させることがわかっています。腸を若く保つためには、レッドミートを食べる頻度や量を減らし、魚や大豆製品を中心とした食事に切り替えていきましょう。

――日本人の死因の第1位は悪性新生物(腫瘍)で、第2位が心血管疾患(脳血管疾患含む)です。心血管疾患は主に狭心症や心筋梗塞を指す虚血性心疾患で、日本の心血管疾患による死亡者数は増加傾向にあります。心疾患の患者数は 305.5万人、同様の血管関連である脳血管疾患患者は 174.2 万人。これらを合わせた心血管疾患患者数は479.7万人です。※
※厚生労働省、令和4年(2022)、人口動態統計(確定数)の概況を基にマルハニチロにて作成。

内藤:心血管疾患を防ぐためにω3系脂肪酸が有効であることが知られています。ω3系脂肪酸とは、青背魚に多く含まれる DHA・EPA、エゴマ油や亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸などの不飽和脂肪酸のことで、心血管疾患のリスクを低減することが多くの研究で明らかにされています。特に魚類のω3系脂肪酸は、海外の研究で循環器疾患への効果について多数報告されています。

毎回きちんとした食事をとるのが難しい場合は?

――毎回の食事で健康的なものを食べるのが理想ですが、外食が続いたり、忙しくてきちんと食事をとれない日もあります。

内藤:1日3回の食事をすべて健康的にするのが難しい場合、主食を雑穀米や全粒穀物にする、レッドミートを減らす、おやつを魚肉ソーセージにする、この3つから始めてみてはいかがでしょうか。食生活は3度の食事だけでなく、おやつにも目を向けましょう。小腹がすいたときや、運動後にたんぱく質を摂取する場合、魚肉ソーセージは非常に手軽で便利な食品です。魚に含まれるDHAやEPAの効果は前述したとおり、心血管疾患になるリスクを低減します。

内藤 裕二

京都府立医科大学大学院医学研究科

教授/医学博士