景気に関係なく「ひたすら保有」前提で買う

株式投資を始めると、あなたは嫌でも景気の影響を受けることになる。リーマンショックやコロナショックのようなひどい停滞局面もあれば、アベノミクスやトランプノミクスのような非常に強い景気拡大を経験することもあるはずだ。

素人考えなら、景気停滞局面に株を買い、景気回復後にそれを売れば儲かると考えるだろう。しかし、成長株というのは、そういう景気の良し悪しとは別の因子、つまり新たな需要の開拓やその企業の内部課題の解決により利益を拡大させるため、長期的な観点で見れば景気にはそれほど大きな影響を受けない。

そのため、成長株投資においては、景気に関係なくひたすら保有し続けることが前提で構わない。本当に良い株なら、変に景気動向に振り回されずにずっと持ち続けることが結果的に最も高い成果につながるだろう。長期には企業の業績と株価は連動し、企業の成長という大流が株価の大上昇をもたらす主因となる。

しかし、1~2年程度の範囲では別の流れの影響を強く受けるために、急上昇期と停滞期を繰り返す。このため成長株投資は時に強い忍耐力を必要とする。5年や10年のスパンで見ればテンバガー(10倍高)になるような大化け株も、時にはマイナス20~同30%といった株価の急落に見舞われることがある。

そうすると、「この企業は成長する」と確信していたにもかかわらず、多くの個人投資家は耐えられずに売ってしまう。「早く売らないともっと下がる」と不安になるからだ。急落直後からすぐに上昇するならまだ我慢もできようが、その後に1年にも及ぶような停滞期が続くと、ほとんどの個人投資家は降参してしまう。

皮肉にも、彼らの行動こそが株価の急落や停滞の原因でもあるため、人々が降参しきった直後から株価は上昇を始める。ピーター・リンチはこのような現象を「捨て去った後の繁栄」と呼んでいる。

成長株といえども、相場の停滞期には連動する。相場の下落に逆らって逆行高を続ける成長株は非常に少ない。また上昇期に急騰した分、株価の下落幅は大きくなりやすい。多くの個人投資家はここで保有株を手放すという判断に至る。その際に「次の上昇期が始まる前に買い戻せばよい。それまで別の銘柄でひと儲けしよう」という思惑が働くこともあるだろう。

しかし相場の低迷期には他の銘柄も下がるので、乗り換えても株価の下落に伴う損失を避けるのは難しい。さらに、次の上昇期が始まる前に買い戻すといっても、それがいつ来るかは誰にも分からない。

結局、買い戻し損ねて、「あの時、あの株を持ち続けておけば大儲けできたのに」と後悔することになる。リンチはこのような行為を「花を引き抜いて雑草に水をやる」と表現し、素晴らしい成長株を見つけたら簡単には手放してはならないと諭している。

奥山 月仁
会社員投資家