職場で「一丁目一番地」という言葉を耳にする機会もあるでしょう。ただ、昭和世代には当たり前でも、若者にはこの言葉、ほとんど意味が伝わっていないようです。今回は、山口 謠司氏の著書『じつは伝わっていない日本語大図鑑』から、含蓄にあふれながらも若者には意味が伝わらない「昭和の言い回し」をご紹介します。無意識に使っていないか、この機会にチェックしてみてください。
上司「このプロジェクトの一丁目一番地は~」新卒「?」…じつは若者にまったく伝わっていない「昭和の言い回し」13選
昭和の言い回しは含蓄があるが「伝わらない」という現実
いちばん重要で最優先事項を意味する「一丁目一番地」。会社員の若者たちからも「ウチの上司がよく言ってる」という声が聞かれますが、彼らは最初、何のことだかわからず別の意味に捉えていた人が大半だと、ある調査が伝えていました。いわく「新宿の歓楽街のこと?」「どこかの居酒屋の住所?」「誰かの住まいだと思った」……などなど。
家庭でも、お母さんはこんな言葉を口にしているかもしれません。「滑ったの転んだの言うんじゃない」――それは、つべこべ文句を言うな、と。あるいは、「またお父さんは午前様なんだから」とか。つまり飲んで朝帰りということ。
ある意味、昭和の言い回しは、含蓄のある言葉の宝庫です。
しかし問題は、今の若い人たちにはほとんど理解されていないなどとは、昭和のおじさん・おばさんたちは、まったく気づきもせずにしゃべっていることです。
会社の上司(おっさん)が言いがちな――
●よしなに…おまかせするから、上手にやっておいてね。うまい具合になるよう、よろしくね、という意。ほぼ丸投げに近いニュアンス
●一丁目一番地…いちばん初めに取り組まなくてはならない最も重要な案件や課題
●ペライチ…ペラっとした1枚の紙を指す略語。企画書や資料などをその1枚に要領よくまとめること。読む側は数枚に及ぶ長さを嫌うため
●全員野球(で)…チーム全員が力を合わせて、この仕事に取り組もう、の意。レギュラーも補欠も全選手が心を一つにして野球試合に臨むがごとく
●一枚岩…一枚つづきで裂け目のない大きな岩のように、一致団結した強固な組織でまとまろう、という意
●全力投球(で)…あらん限りの力を出して。最大限の力を発揮して
●阿吽(あうん)の呼吸…二人が一緒に何か事をする際、気持ちや調子が微妙に一致する、その具合を指す。「阿」は出す息、「吽」は吸う息のこと
●決め打ち…話し合いをはしょり、はじめから結論ありきで、会議や商談などに臨むこと。囲碁などで手を決めておいて、そのとおり打つやり方から
●えいや(で)…気合を入れて頑張る意。どんな大変なことも頑張ればなんとかなるさ、ということ
●なるはや…「なるべく早く」の略。とにかく急いでいる状況
●突貫工事…休まず短期間で一気に物事を押し進めて終わらせること。主に建築現場で使われる言葉が由来
山口 謠司
大東文化大学文学部中国文学科教授