私たちの身近な娯楽の1つである音楽。単に曲を楽しむだけではなく、集中したいときやリラックスしたいときなどの気分転換として聴きたい音楽を選ぶこともあります。たとえばゆったりとした音楽を聴くと、自然と心が落ち着くという経験は誰しもあるのではないでしょうか。このような音楽が私たちの脳に与える影響を科学的に発展させ、目的に合わせた音楽を再生するニューロミュージックの研究が進められています。そこで今回は、音楽と脳科学を掛け合わせた新しい技術である、ニューロミュージックの実態と可能性についてご紹介します。
聴くだけで、集中もリラックスも自由自在!音楽で脳を理想の状態に導く「ニューロミュージック」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

音楽と脳波とメディテーションを組み合わせた新しい癒やしのサービス

 

また、最先端ニューロサイエンス企業であるSpark Neuro Japanでは、音楽と脳波とメディテーションを組み合わせた脳波測定デバイス「NEUROTONE」プログラムを企画。昨年には、表参道にある「神宮プライズ」の会員制ヘッドスパにて期間限定でサービスの提供を行いました。

 

NEUROTONEでは、独自のデバイスを使用して高精度な脳波測定を実現。3種類の周波数の音楽を聴きながら脳波をBrain TECHプログラムにて計測し、曲ごとのリラックス度合いを数値化して比較します。そして、分析したデータからその人が最もリラックスできる楽曲の選定を行います。

 

実際にNEUROTONEを取り入れたヘッドスパメニューでは、顧客は最初に問診と共にNEUROTONEで脳波を測定。脳波の分析によって選定された楽曲を聴きながら、最大限リラックスした環境でヘッドスパ施術が行われます。施術後は、脳波測定結果によって選曲された楽曲をプレゼントするサービスも実施。

 

このサービスは、常に忙しく頭を使うことが多い現代人に快適な眠りや休息の空間を提供することを目的に行われました。

認知症防止が期待される「ガンマ波サウンド」とは

 

脳科学と音楽による融合は、健康や医療の分野においても可能性が期待されています。大手製薬企業である塩野義製薬は、先端テクノロジー企業であるピクシーダストテクノロジーズと共同し、認知症防止に効果があるとされる、ガンマ波サウンドの研究開発を進めています。

 

高齢化が進む日本において、社会的な課題となっている認知症。その特徴の1つに、脳内で認知機能を発揮するために必要なガンマ波と呼ばれる40Hzの脳波の活動が低下するという報告があります。このガンマ波は40Hzの音や光の刺激を受けることで増大するとされ、いままでも米国の研究機関等で認知症予防の研究に用いられてきました。

 

しかし従来使われていた40Hzの音は、ブザーのような単調なパルス音であまり聴き心地のよいものではありませんでした。そこでより生活に溶け込み、日常的に聴き続けることのできる聴き馴染みのよい音になるよう開発されたのがガンマ波サウンドです。

 

ピクシーダストテクノロジーズの豊富な音処理技術を活用することで、テレビなどの音源をリアルタイムで40Hzに変調することを実現。さらに変調した声や音楽を聴き取りやすく調整することで、暮らしのなかで気軽に認知症ケアを行える可能性を見出しました。

音楽が私たちに与える可能性

 

音楽が脳に与える影響は決して少なくないことが、近年科学的に実証されてきました。脳波を分析して理想の状態に脳を導くニューロミュージックは、私たち自身もまだ気づいていないような驚くべきパフォーマンスを引き出してくれる可能性を秘めています。

 

近い将来、音楽は単なる娯楽としてではなく、自分自身を最良の状態に整えてくれる欠かせない存在になるかもしれません。

 

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<著者>

吉田康介

フリーライター