競馬や宝くじといったいわゆる“ギャンブル”は、胴元の取り分だけ損をする仕組みであり、経済合理的にはやらないほうがいいとされています。しかし、経済評論家の山崎元さんは、あえて「競馬」をやっていたそうです。いったいなぜなのか、詳しくみていきましょう。※山崎元氏は2024年1月1日に逝去されました。衷心より哀悼の誠を捧げます。

投資と違い、ギャンブルは経済合理性に欠ける!しかし…経済評論家・山崎元さんが「競馬」だけは続けていた理由
衝撃!競馬は平均的に勝っても75%、宝くじは45%になる
山崎先生:じゃあ、ここで君が言っていた、宝くじや競馬と株式投資を比べてみようか。競馬は胴元である運営者側が、集めたお金からだいたい25%くらい引いて、残りの75%を、馬券を買ったお客さん同士で取り合う。だから仮にずっと1万円の馬券を買い続けたとしたら、平均的な払い戻し金は、だいたい7,500円になってしまう(マイナス25%だから)(図表4)。
大橋:平均点をとって、7,500円になってしまうのは、損な気がしますね。
山崎先生:宝くじは法律で還元率が50%を超えてはならないと定められていて、実際の還元率は約45%くらい。つまり、宝くじを1万円分ずっと買い続けたら、平均で4,500円くらいになる(図表4)。
大橋:そんなに低いんですか!?
山崎先生:うん。ちなみに還元率45%っていうのは驚異的に低くて、世界トップレベルのボッタクリギャンブル。だったら世界株のインデックスファンドでプラス5%を目指したほうがいいでしょう。ちなみに宝くじで損する分は「無知の税金」って言われている。正しい知識があれば、失うことのないお金だからね。
大橋:無知の税金ですか……。
山崎先生:どうせ銀行に預けててもお金はたいして増えないんだから、無理のない範囲でリスクを負って平均でプラス5%が狙えるインデックスファンドを買ってみようよ、ということだね。
オオハシ注
日本では投資をしている人がまだ少ないそうです。それは、この考え方が理解されてないのが原因だと思いました。
投資というと、世の中の情勢をくまなく知って、株が上がるか、下がるか予想する。それで上がったら大儲け、負けたらすっからかん。そんなイメージを持ってしまいがちですが、そうじゃないコツコツ型の「お金の増やし方」があり、欧米ではそれが一般的なのだそうです。
で、ここで言うコツコツ型の「お金の増やし方」というのは、100万円がたぶん105万円になる。減るかもしれないし、もっと増えるかもしれない。でも長い目でみたら、おそらく平均105万。
というやり方があり、これを簡単に実行できる金融商品も出ていて、素人でも難しいことではない。ということなのです。
ギャンブルは「教育娯楽費」?
大橋:ということは、先生は当然、ギャンブルはやらないんですよね。
山崎先生:やるよ。競馬を。
大橋:えーっ! 話違うじゃないですか。ギャンブルじゃなくて投資をやるべきなんじゃないんですか。
山崎先生:そうだよ。
大橋:(開き直った……)じゃあ、なんでやるんですか? さっきの話だと、胴元が25%とるから1万円を使ったら7,500円になるって言ったじゃないですか。
山崎先生:2,500円で熱狂できるし頭も使うからね。私はその精神的効用を買ってるの。くだらない映画を観るよりは全然いい。投資じゃなくて「教養娯楽費」だね。
大橋:(教養娯楽費……)。
山崎先生:とにかく、借金をしてギャンブルにつぎ込むのは問題外だけど、節度をもってやる分には、いい娯楽。
まとめ
・リスクとは増えるかもしれないし、減るかもしれないこと。
・リスクをとることによってリスクプレミアムを期待できる。
・競馬や宝くじは胴元の取り分だけ損をするから経済合理的にはやらないほうがいい。
・ただし、競馬は損が問題ない範囲でやるなら意思決定の練習や精神的鍛錬になるらしい……(本当だろうか!?)。
山崎 元
経済評論家
大橋 弘祐
作家/編集者