競馬や宝くじといったいわゆる“ギャンブル”は、胴元の取り分だけ損をする仕組みであり、経済合理的にはやらないほうがいいとされています。しかし、経済評論家の山崎元さんは、あえて「競馬」をやっていたそうです。いったいなぜなのか、詳しくみていきましょう。※山崎元氏は2024年1月1日に逝去されました。衷心より哀悼の誠を捧げます。
投資と違い、ギャンブルは経済合理性に欠ける!しかし…経済評論家・山崎元さんが「競馬」だけは続けていた理由
株式投資はリスクを引き受けることで「年間5~6%」の報酬が得られる
山崎先生:よく、リスクって言葉使うでしょう。リスクって何だかわかる?
大橋:ハイリスク、ハイリターンとか言うやつですよね……。減るかもしれないことですか?
山崎先生:リスクというのはそれだけじゃなくて、「減るかもしれないし、増えるかもしれない」ってことなの。
大橋:増えるほうもリスクに含まれるんですね……。
山崎先生:だけど、たいていの人はリスクを嫌うんだよね。朝、起きるたびに貯金が増えたり、減ったりしてたらいやでしょう?
大橋:それはいやですね……。
山崎先生:株式投資ではそのリスクを引き受ける報酬として、リスクプレミアムがもらえるようになってるの。
リスク……増えるかもしれないし、減るかもしれないこと
リスクプレミアム※……リスクを受け入れることによって得られる報酬
※リスクプレミアムはリスクのない資産(国債など)の金利にプラスして、年間どのくらいの収益が期待できるかをパーセントで表します。
山崎先生:それで、プロの投資家や学者の間では、株式への投資において年間5%〜6%くらいのリスクプレミアムが得られると考えられている。私もそう思うからすすめているし、いままでもそんな感じで増えてきた。(図表2)
「年間5%~6%」の根拠は…
大橋:どうしてプラス5%なんでしょう。山崎さんがそう思うだけで、個人的な感想じゃないですか。
山崎先生:「GPIF」という国民から集めた年金を、運用して増やそうとしている国の機関があるんだけど、彼らは株式について、だいたい金利プラス5%くらいの計画を立てて、実際、それくらいの利回りで毎年運用してきた。株式のリスクプレミアムはこれくらいで考えておくのは、別に特別なことではなく世間並みだと思うよ。もちろん、絶対に得られる訳ではないけどね。
※ GPIF……年金積立金を運用している公的な機関。世界最大級のお金をインデックス運用している。
※ 参考値ですが、過去15年において世界全体の株式指数の年間平均リターンは約6〜7パーセント程度と言われています。(「iシェアーズ MSCI ACWI ETF」の運用実績より算出)
大橋:うーん。ちょっとまだわからないんですけど……、いままでは経済成長してきて株価が上がったかもしれませんけど、世界全体の株を買ったところで、これからは、日本のように少子高齢化する国は多いし、景気が悪くなったりするかもしれないのに、それなのに、どうしてプラス5%ももらえるんですか。
山崎先生:そこは、バカが勘違いしやすいところだね。
大橋:バカって……。
山崎先生:リスクプレミアムは、あくまでもリスクをとることに対して生じるものなので、利益成長の予想がゼロやマイナスでも、成長しないという予想が織り込まれているから、「高成長で高い株価」に投資するのと「低成長で安い株価」に投資するのとでは、どちらに投資したら得なのかはざっくり五分五分だね(図表3)。
大橋:経済成長するから株価があがるというわけでもないんですね……。