昨今、珍しくない熟年離婚。離婚自体のショックの最中、離婚手続きのほか、財産分与もしなくてはなりません。年金や退職金、不動産は誰のものになるのでしょうか? 婚姻の円満な終了と、その後の新たな生活を前向きにスタートさせるため、離婚時の財産の分配について知っておきましょう。角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・角村俊一氏が解説します。
こんなはずじゃなかった! 定年直前に妻から差し出された〈1枚の紙〉…熟年離婚したら退職金、年金、不動産はどうなる?【社労士の助言】
年金も元夫婦間で公平に!
財産分与は夫婦が共同生活を送る中で築いた財産の公平な分配という性格が強く、年金も例外ではありません。
年金については元夫婦間で年金の給付額に不公平が生じることを防ぐため、年金分割という制度が設けられています。
分割方法は、当事者の合意または家庭裁判所の決定により年金を分割する「合意分割」と、一方当事者の請求により自動的に分割される「3号分割」の2種類。
これらの制度で分割されるのは、老後の厚生年金額を計算するための基礎となる保険料納付記録です。
【年金分割のイメージ】
BさんはAさんの納付記録の分割を請求し、自らの納付記録に加える。Aさんの保険料納付記録は減り、Bさんの保険料納付記録は増え、それぞれ増減した記録に基づいて老後の厚生年金額が計算される。
なお、退職金の場合と同じく、分割対象となるのはあくまでも婚姻期間中の保険料納付記録に限られます。結婚前や離婚後の記録は対象とはなりません。また、国民年金部分は分割の対象外です。
熟年離婚を突然切り出されてショックを受けるAさん。さらに退職金や年金までもが財産分与の対象となることを聞かされて頭を抱えています。
結婚後に購入した自宅も財産分与の対象となりますから、売却して代金を分けるのか、どちらかが分与を受けて住み続けるのかなど、話し合いをしなければなりません。
Aさんが楽しみにしていたバラ色のセカンドライフ。思い描いていた定年後の生活は夢物語となってしまいました...
角村 俊一
角村FP社労士事務所代表
特定社会保険労務士/CFP