株式投資で資産を増やすための方法として、提唱される「長期投資(バイ&ホールド)」。「長期投資はバイ(買い)ですべてが決まる」と、会社員投資家の奥山月仁氏が言うように、その際の銘柄の選び方が重要です。奥山氏の著書『個人投資家入門byエナフン 株で勝つためのルール77』(日経BP)より、詳しく見ていきましょう。
株式投資で資産を増やすなら「長期投資」が手堅いが…“勝てる銘柄”として〈ホワイト企業〉を選ぶのが得策と言えない、意外なワケ【投資家が助言】
長期にわたって成長しそうな「理想的な企業」を探し続ける
極論を言うと、長期投資はバイ(買い)ですべてが決まる。良い株を買いさえすれば、あとは何もしなくても、その企業があなたを大金持ちにしてくれるのである。
バリュー投資においては、「いつかきっと、あるべき適正価格に株価が到達するはず」という市場の価格調整機能を信じる必要がある。「今は間違った価格形成によって割安に買えるが、いつか必ず企業価値に対して適切な価格になるはずだから、それまではこの株を保有し続けよう」という発想が大前提なのである。
ただ、残念ながら、市場は少々選り好みが激しいため、すべての銘柄がいつかきっと適正価格になるとは考えないほうがよい。いくつかの条件を満たした、市場が好みそうな銘柄についてのみ、いつかきっと適正価格になると考えたほうが、投資戦略上はうまくいくだろう。
では、どういう銘柄が市場に好まれるのか?
一言でいうと、「今後長期にわたって成長しそうな企業」ということになる。つまりグロース投資の対象にもなり得る企業である。それ以外はいったん「消し」だ。いくら画期的な技術を開発したとしても、いくらSNS受けしそうな話題性のある商品を出したとしても、それだけでは長期的な上昇は期待できない。その技術やSNS映えする商品が業績を長期的に押し上げることが確認されて初めて株価が別な動きを始めるのである。
あるいは、いくら環境にいい仕事をしていても、いくら社員に優しいホワイト企業であったとしても、それだけを理由に株価が上昇するようなことはない。確かにそのようなちゃんとした企業のほうがそうでない企業と比べて長期的に見て成長しやすいという傾向は存在するが、それが理由で株価が上がるわけではない。あくまで、成長が前提なのである。
「じゃあ、長期ってどのくらい?」。そんな疑問が湧いて当然だ。結論から言うと、「3~5年」である。「1年は成長しそうだが、その先は難しい」と判断されてしまう企業は、ほぼ確実にその先の停滞が株価に反映されるため、たとえ割安であったとしても、株価は上昇してくれない。誰の目にも停滞が明らかになってからでは売るに売れなくなるので、早め早めに多くの投資家が売りに動いてしまうのだ。
その点、3~5年も成長が期待できる企業は投資家も安心して持ち続けることができる。仮にその先は成長が難しい場合でも、それだけの期間があれば、企業も次の手を打つことができる。
アマゾン(AMZN)を思い出してほしい。最初、アマゾンはネット専業の書店に過ぎなかった。それでも3~5年は成長が期待できたが、その間に本以外のものも売り始めた。さらにクラウドや動画サービスが始まり、今では世界トップクラスの超巨大企業になったわけだ。
多くの若き成長企業はアマゾンと同じような成長構造を持っている。まず、現業が順調で3年程度の未来までは十分成長が期待できる。さらにその次についても何かしら既に手を打っていて、どっちに転がるかはまだ分からないものの、成長の種を複数用意している。それは海外進出の場合もあるし、品ぞろえの強化の場合もあるし、全くの新事業の場合もある。
私は常にそんな理想的な企業が激安価格で買える機会を探し続けている。
奥山 月仁
会社員投資家