「日本は休養の後進国」というのは本当なのか?

8割の人が疲れているということは、どうも日本人は、休みの日数が多いわりに、ちゃんと休めていないのではないか。あるいは、休養の取り方がうまくいっていないのではないかという疑問が浮かび上がってきます。

かつて安倍晋三元首相が「一億総活躍社会」というビジョンを掲げて、長時間労働の是正など「働き方改革」をおこなったことは記憶に新しいですが、国民の8割が疲れているという調査結果を見れば、改革は功を奏していないといわざるをえません。

国民の大多数が疲れていて、働き方改革も効果を上げていない。「日本は休養の後進国ではないか」と指摘する人もいるようです。

しかし「後進国」という表現はちょっと違うと私は思います。

なぜならあまり知られていませんが、厚生省はすでに1960年代から健康対策の一環として疲労対策を講じているからです。1978年には「国民健康づくり対策」を国民に対して発信しました。以来、10年刻みで第2次、第3次、第4次と、テーマごとの目標値を掲げた対策が打たれ、2023年に第4次が終了しました。

第3次からは「健康日本21」という名前でも呼ばれており、こちらのほうがなじみがあるかもしれません。第5次は2024年の4月から「健康日本21(第三次)」という名称で実施されることが決まっています。期間は12年間の予定です。

さて、その第1次国民健康づくり対策で提唱されたのが「健康づくりの3要素」、すなわち「栄養・運動・休養」です。「健康づくりにはこの3つが大切ですよ。まずは皆さん、この3つを意識した生活を送りましょうね」と、国民一人ひとりにみずからの健康管理を呼び掛けました。今でいうセルフメディケーション(自分自身の健康に責任をもち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)の先駆けです。

私が「日本は休養の後進国ではない」といったのは、このように、早くから国が休養の重要性に言及していたからです。ただし、その後がなかなか続きませんでした。