年々増加する日本の医療費。2022年には「過去最高額」を更新しました。しかも、少子高齢化による人手不足もあり、医療費は今後も増加すると予想されています。そのようななか、国は「国民皆保険制度」をいつまで維持できるのか……『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)著者の奥真也氏が、日本の現状と将来について、医師の視点から分析します。
資産の有無が“長生きの質”を左右する時代に
「嫌なことを言わないでほしい」と思われるかもしれませんが、これからは経済力が長生きの質を決める可能性もあることを知っておいたほうがいいでしょう。
現代は医療技術が発達して、病気になったときの治療の選択肢が昭和の時代と比べて格段に増えました。日本は国民皆保険制度があるおかげで、国民全員が安い医療費で高度な医療を受けられるようになっています。患者さん自身が国内にある医療機関の中から自由に選んで受診できるフリーアクセスの制度もあります。
しかし、これらの制度がいつまで続くかはわかりません。今のように誰もが自由に病院にかかり、治療を選べる状態は長く続かないかもしれないと私は考えています。なぜなら、国の医療費は年々増加しているからです。
2022年の医療費は「過去最高」を更新…人手不足も相まって深刻化が見込まれる
新型コロナの感染拡大に伴う受診控えがあり、2020年は対前年比で1兆円超の減少となりましたが、長期的視点で見れば増加傾向にあります。2022年の医療費は46兆円となり、過去最高を更新しています。
医療の進歩によって新薬や新しい医療機器、医療技術が登場して診療報酬も増額されています。団塊の世代が全員75歳以上となる2025年以降は、少子高齢化による人手不足と相まってますます医療費が膨らむでしょう。
高額医療製品は増え、それを使う人が増えているのですから、医療費は増える一方になります。現在の公的医療制度を維持し続けることがかなり難しくなっているのは疑いようがありません。
そうなると、次に起こるのが個人の医療費負担の増額です。
保険適用される病気も少しずつ限定されていくかもしれません。治療しなければ患者さんが死に至る確率が極めて高い「致死的な病気」については国が面倒を見るが、そうでない病気については、国は面倒を見ないという傾向が強まっていくのではないかと思われます。