厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告書(年報)」によると、令和3年度末時点での要介護(要支援)認定者数は約690万人と、その人数は20年で約2倍に増えています。少子高齢化社会に伴い、介護は誰にとっても他人事ではない時代になっているのです。そこで、親に介護が必要になった場合の具体的な対応策について、事例をとおしてみていきましょう。石川亜希子氏FPが解説します。
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介護の問題は「離職」では解決しないことが多い
責任感が強く1人で抱え込んでいたAさん。人に悩みを話すようになってからは気持ちも落ち着きました。アドバイスをもらいながら介護サービスを見直し、もっと積極的に利用することにしたそうです。
そして、知り合いの会社で経理を手伝えることに。正社員時代と比べると収入は減りますが、それでも収入を確保できたこと、そしてなにより社会とのつながりができたことで、自分の人生についても前向きに考えられるようになりました。
仕事と介護の両立が困難となり退職してしまう介護離職ですが、実は、介護離職しても解決しないことが多いといえます。
介護者が退職して収入が減ったことにより、介護サービスを受ける頻度を減らすことになってしまったり、たとえ経済的に余裕があったとしても、社会との接点が減ってしまったりすることは、介護者にとって精神的ストレスを溜めてしまうことになります。
介護は育児と違って見通しがつきにくいものですが、介護の後は自分の人生が続いていくのですから、介護離職後のライフプランを明確にしないまま退職してしまうことはとても危険です。
令和7年には、いわゆる団塊世代が75歳以上となり、人口の2割が75歳以上という「2025年問題」も控えています。要介護(要支援)認定者数の増加に伴って介護離職者が増加することのないよう、介護と仕事の両立を前提に、それぞれの介護プランを作っていくことが大切です。
※個人情報保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。
石川 亜希子
AFP