厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告書(年報)」によると、令和3年度末時点での要介護(要支援)認定者数は約690万人と、その人数は20年で約2倍に増えています。少子高齢化社会に伴い、介護は誰にとっても他人事ではない時代になっているのです。そこで、親に介護が必要になった場合の具体的な対応策について、事例をとおしてみていきましょう。石川亜希子氏FPが解説します。
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「介護離職」を避けるために知っておきたいこれだけのこと
介護離職を避けるためには、精神的に追い込まれないようにする、介護サービスについて再度見直す、さまざまな支援制度を有効活用する、などが挙げられます。
まずは「介護者が精神的に追い込まれないようにすること」がもっとも大切です。1人で考えていると、どうしてもネガティブな発想に陥りやすいものです。ケアマネージャーや訪問ヘルパー、同じ悩みを持つ人など、気軽におしゃべりできる交友関係を築きましょう。話を聞いてもらえるだけでも気持ちがラクになりますし、思わぬ情報を得ることができるかもしれません。
要支援・要介護状態になると介護保険制度が適用され、介護保険法にもとづく介護サービスを1割~3割の費用負担で利用することができます。介護保険法にもとづく介護サービスは全26種類54サービスにもおよびます。利用している介護サービスについても、ぜひ見直してみましょう。
「施設に預けるのはちょっと…」という考えはもったいない
介護付き有料老人ホームは、介護保険が適用されても居住費や食費が高額な場合が多いほか、施設に預けること自体に抵抗を感じるなど、さまざまな理由で介護施設の利用を避ける人は少なくありません。しかし、さまざまな介護ニーズに応えてくれる「小規模多機能ホーム」という選択肢は知っておいてほしいです。
小規模多機能ホームは、在宅介護をしている方向けの地域密着サービスで、通い(デイサービス)、訪問(ホームヘルプ)、宿泊(ショートステイ)を組み合わせて、月額定額制(宿泊費・食費は別途)で回数の制限なく利用することができるものです。お住まいの市区町村のHPから空き状況を調べることができます。
国や自治体による「介護支援制度」はフル活用したい
そして、公的介護支援制度について正しく理解しておくことも大切です。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」にもとづく制度として主なものに「介護休業」「介護休暇」があります。
「介護休業」は、対象家族1人につき3回まで、通算93日取得することができるものです。「介護休暇」は、対象家族1人につき年5日まで取得できます。
これらの制度だけで介護が解決するわけではありませんが、介護サービスと組み合わせることによって仕事と介護の両立を目指すことができます。
また、雇用保険には「介護休業給付金」の制度があり、給料の67%が支給されます。
これらは、会社に制度があるかどうかではなく「法律で定められている制度」です。ぜひ活用しましょう。