「介護休業」は仕事を続けるための準備期間

そのような状況に陥らないためには、仕事と介護の両立をするという考え方に囚われないことも大切です。

育児・介護休業法※5では、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族を介護する必要のある労働者のための休業制度が設けられています。対象家族1人につき、通算93日まで取得が可能で、3回まで分割を取得できます。

介護休業期間中は、一定の条件を満たせば、雇用保険から介護給付を受けることができますし、介護休暇制度の取得や、介護のための短時間勤務制度、所定外労働時間の制限が定められています。勤め先によっては、法定よりも手厚い制度が準備されていることもあります。

しかし、介護休業だけでは、介護はいつ終わるかわからず、十分ではありません。よって、介護休業は介護を行うための休業ではなく、仕事に復帰するための準備期間(注)ととらえておく必要があります。

そのうえで、家族等の介護に直面した後、仕事と両立しながら働き続けるためには、介護の問題に直面する前から、介護に関することを調べておくことがよいでしょう。

いざ介護に直面をすると、慣れないことに戸惑い、休業期間の時間をほとんど使ってしまうことになりかねません。そうならないためには、介護の仕組みや、介護が心配な家族が住む自治体の介護に関する情報を調べるなど、早めに準備できることは取り組んでおくことが大切です。

企業によっては、相談窓口を設けていたり、契約している福利厚生サービスのなかに、介護サービスがメニューに含まれているにも関わらず、従業員側がそれらを知らないこともあります。

最近では、テレワークが浸透している企業のなかには、育児だけではなく、介護を理由に遠方での勤務が認められることもあります。介護離職を判断する前に、勤め先企業の支援制度を活用できるよう、情報収集をしておくことが求められます。

(注)看取りのために休業を使われる方もおられますが、本稿では介護の準備に焦点を当てて述べています。

既定の考え方に囚われず、新しい視点を持つ

本稿では、介護について述べました。

米国の教育学者のドナルド・E・スーパーが提唱したキャリア理論「ライフ・キャリア・レインボー」では、キャリアを仕事や職業のみならず、「ライフ・ステージ」と「ライフ・ロール」(人生における役割)で示しています※6

年齢ごとにどのような役割を担ってきたか、あるいは担うことが想定をされているか、という自分の人生全体を可視化※7してみると、介護という役割に対しても、違った見え方ができるかもしれません。

小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト