預金残高1,200万円だったはずが…通帳を見た姉「なにこれ!」

幸雄さんの通帳の残高は1,200万円。老人ホームの入居費用100万円はすでに支払いずみで、月々の入居費用の18万円も幸雄さんの年金で十分賄える金額です。つまり、お葬式代を支払っても、十分すぎるゆとりがあったのです。

とはいえ、この先なにがあるかわかりません。もし大きな病気をすれば、手術や入院で費用がかかるでしょう。

「きっと優子だって、そのくらいのことはわかっているはず…」

和子さんは自分自身へそう言い聞かせつつ、後ろ髪をひかれる思いで東京へと戻りました。

*  *  *  *

それから2年。幸雄さんは80歳の誕生日を迎えて間もなく、風邪をこじらせて亡くなってしまいました。

幸雄さんの訃報を聞きつけた和子さんは、老人ホームに隣接する病院へ直行しました。

そこには、病院と提携している葬儀会社の担当者もやってきて、和子さんと優子さんは2人、葬儀のプランの説明を受けました。和子さんは、葬儀にだいたいの予算の目安をつけており、その範囲内でできる限りよいお葬式にしてあげたいと思っていました。ところが優子さんは、お花から棺まで、すべて最安値のものを選ぼうとするのです。

和子さんは、優子さんの態度に不信感を抱き始め、幸雄さんが預けてある通帳が心配になってきました。葬儀のプランが決まったあと、和子さんは、優子さんに尋ねました。

「お葬式代は〈あの通帳のお金〉から出すよね? 一度、金額を確認させてもらえないかな」

和子さんがそう頼んでも、優子さんはなかなか見せようとしません。和子さんは「お金をおろしておかないと、銀行に口座が凍結されてしまう」と言って急かすと、優子さんは渋々通帳を差し出しました。

「何これ? どういうこと?」

通帳を見た和子さんは、思わず絶叫してしまいます。

 「200万円しか残ってないじゃない!」