月9なくしてドラマ在らず

「私のことで何を言うのも勝手だけれど、カンチのことを侮辱するのは許さない」

これは『東京ラブストーリー(以下『東ラブ』略)』(1991年)のワンシーンであり、赤名リカ(鈴木保奈美)の台詞である。カンチとは、永尾完治(織田裕二)のあだ名のことだ。

『東ラブ』と言えばリカによる「カンチ、セックスしよう!」と、直球でカンチにアピールをする台詞が、あまりにも有名である。放送当時の1991年は、男性よりも前に出てはいけない。そんな風潮が残る環境でありながら、女性から気持ちをはっきりと伝えた。男性がイニシアチブを取ると思われがちな性行為だけれど、性欲や情熱に男女差はない。リカが笑顔でアピールしたことは、明るいカルチャーショックでもあった。

そんな名言を差し置き、冒頭の台詞のほうが、わたしには強くインプット。台詞が発せられたのは、社内でのワンシーンだった。リカとカンチの同僚(男性)が「あんな女(リカ)と寝るなんて、永尾はバカだ」と、噂をしていることを聞きつけたリカ。自分との関係性を勘繰られたうえに、好きな男性があらぬことを言われてしまった。くやしい、くやしい。大好きな人を守るため、相手に平手打ちをかますリカ。好きな男をかばうリカが格好良かった。同僚をグッと睨みつけて、勝気さを漂わせる目つきも鮮明に覚えている。

『東ラブ』が放送されていた時間帯は、毎週月曜21時=「月9」だ。「げつく」。この言葉の響きだけで蘇ってくる、生温かさはないだろうか。自分が好きだったタイトル、放送翌日に仲間たちと交わす、作品の感想。まだブラウン管のテレビから発信される情報源が最先端だったころ、圧倒的な人気を誇っていた「月9」。年収や容姿、性別なんてまったく関係がない。とにかく「月9」を見ていないと、火曜日の同僚や同級生との話題に乗り遅れてしまう。会社や学校で、ぼっちにされてしまうのだから、視聴する以外に選択はないという、心躍る強制だった。

そんな月9の人気が上昇し始めたのは、1990年代からと記憶している。平成に放送された「月9」の平均視聴率はざっと、20~30%。ドラマに出てくる、ファッションやインテリアに憧れて、上京する若者も後をたたなかった。実際、ドラマに出てくるような部屋には予算オーバーで住めなかったけれど……。「月曜夜は街中からOLが消えた」と、各所で噂されているのは、あながち嘘ではない。わたしも、10~20代の青春期を「月9」とともに過ごしていたひとりで、月曜夜だけは在宅率が高かった。