「月曜日の夜9時は街から女性たちが消えた」と言われるほど女性たちから絶大な人気と支持を受けた『東京ラブストーリー』。1990年代を代表するフジテレビの“月9”ドラマです。昭和生まれにとっては懐かしい、平成生まれにとっては新文化の「平成ドラマ」の数々。作家・コラムニストの小林久乃さんによる著書『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)から一部抜粋し、平成ドラマの魅力や楽しみ方をお伝えします。

性欲や情熱に男女差はない…月9の金字塔『東京ラブストーリー』が与えた〈明るいカルチャーショック〉【バックトゥ平成ドラマ】
実は恋愛モノ以外にも…豊富なラインナップの月9
ムーブメントを築き上げた「月9」。男女の色恋沙汰が、若者のステイタスだった1990年代。需要に応えるように、ラブストーリーが多く放送されているイメージがあった。「月9=恋愛モノ」。でもその裏で、実は多種多様なジャンルを制作していた……というのが、わたしの思うこの放送枠の醍醐味だ。
例えば『101回目のプロポーズ』(1991年・フジテレビ系列)。42歳のおじさんがひと回り年下の女性へ、必死になって「僕は死にません!」と、体を張って求愛をするという設定に、老若男女がドラマの熱狂の渦に巻き込まれていった。この作品、浅野温子と長谷川初範のラブシーン以外は、純愛と兄弟愛のひしめく感動物語。真剣に観ていた10代のわたしには人間愛のほうが強く感じられたものである。
『ひとつ屋根の下』(1993年・フジテレビ系列)は、両親を亡くした六人兄弟が少しずつ心を通わせて、困難に立ち向かっていくファミリードラマ。あんちゃん(江口洋介)のひたむきさに、毎週泣かされていたことを思い出す。
『氷の世界』(1999年・フジテレビ系列)に至っては、竹野内豊主演による、ミステリー作。
つまりラブストーリーがベースであると見せかけつつ、バーリトゥード(何でもあり)方式の内容が月曜21時に並ぶ。視聴者を夢中にさせた理由のひとつであり、新しさであり、令和への布石であったとわたしは思う。
(次のクールは、どんな内容が放送されるのだろう?)
と、胸を高鳴らせながら、新聞のテレビ欄やテレビ情報誌に目を通すのが楽しみだった。今でこそ、一箇所の放送時間帯に、ミステリー、ラブストーリー…と、様々なジャンルが飛び出してくることが普通になった。あの頃の「月9ガチャ」が発祥だ。