※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
3.11を経験して…仙台市が取り組む防災テクノロジー
2011年に東日本大震災の被害を受けた仙台市は、その経験を生かし、最新のテクノロジーを駆使した防災対策を提案しています。そのひとつが「BOSAI-TECHイノベーション創出促進事業」です。
「BOSAI-TECHイノベーション創出促進事業」とは、産業界・学校・官庁・金融機関の四者による連携(産学官金連携)を通じて、仙台や東北地域から新しい事業の創出や共同研究、実証実験、企業や研究機関の新規立地などを持続的に起こし、その結果を社会に実装する「BOSAI-TECHイノベーション・エコシステム」を形成することを目指しています。
オープンイノベーションを通じて、仙台防災枠組の理念に基づく製品やサービスの創出を支援。また、大手企業、地域企業、外国企業、研究機関など、「BOSAI-TECHイノベーション・エコシステム」に関心のある関係者が協力するプラットフォームを一体的に運営する事業です。
平成31年3月に策定した「仙台市経済成長戦略2023」は、ICT関連企業と広範な分野の民間企業との協業を創出。イノベーションを促進する一環として、「防災×IT」(BOSAI-TECH)やドローンの実証実験などを通じて防災関連産業を創出し、地域産業の活性化を目指しています。
この戦略の一環として位置付けられているのが、「仙台BOSAI-TECHイノベーションプラットフォーム」です。防災、テクノロジー、ビジネスの3つの領域で活動する企業、団体、人材などが加わり産学官金連携することで、多様な防災課題に対する新たな解決策や新事業を生み出す場を提供。このプラットフォームによって、参画企業の新たな防災事業の創出と成長を支援するだけでなく、これまで実現が難しかった防災課題に挑戦しています。
たとえば、あるプラットフォーム会員企業は、被災後の停電によりインターネットが利⽤できなくなった場合でも、衛星回線を使⽤して自治体情報共有が可能なシステムをソリューションとして発信しています。
プラットフォーム会員の技術やプラットフォームから生まれた事業を、仙台をはじめとする地域から日本全国、そして世界に向けて展開を図ることで「仙台防災枠組」の理念実現を目指しています。
震災時の厳しい状況を体験し、防災の重要性を痛感したからこそ、同事業に貢献したい多くの市民や行政、企業が集まっています。
※仙台BOSAI-TECHのHPサイト(https://sendai-bosai-tech.jp/)
津波避難広報ドローンによる自動発進と警告
東日本大震災の発生時、仙台市では津波避難の広報中に市の職員と消防団員が犠牲になりました。その教訓から、津波避難広報における新たな手段として津波避難広報ドローンの整備をおこない、令和4年10月17日から本格運用を開始しています。
犠牲者をゼロにすることを目指し、従来の防災無線を活用しつつ、異なる手段を組み合わせて避難を誘導。住民だけでなく、サーファーや釣り人など、沿岸部を訪れている人にも速やかに避難してもらうことを想定しています。
津波避難広報ドローンは、津波警報発令時に全自動で離陸。そして、スピーカーとカメラを搭載した2機のドローンが全自動で飛行し、往復約7キロの北行きと、往復約8キロの南行きの2つのルートをそれぞれ飛行し、スピーカーから避難の呼びかけをするとともにサイレンを流します。
また搭載されたカメラにより、リアルタイム映像を市の災害本部に配信。任務完了後には自動で基地局に戻り、給電などの必要な作業をおこなうことができます。市によると、自動運航のドローンによる津波避難の呼びかけは世界初。津波避難広報ドローンがあることで、防災ヘリコプターによる避難広報や監視の負担軽減に繋がり、救助活動へ注力することができます。