命に欠かすことのできない水ですが、愛猫に与えるのは水道水で問題ないのでしょうか? 特に肝臓や膀胱の疾患が多くみられる猫にとって、水は重要な要素です。獣医師である、宮下ひろこ氏の著書『獣医さん、聞きづらい「猫」のことぜんぶ教えてください!』(日東書院本社)より、猫に与える飲水について解説します。
体重1㎏あたり40〜50㏄/日の水を
猫が1日にどれくらい水を飲んでいるのか、ふだんは考えずに水を与えているかもしれません。多頭飼育の場合は個々の測定は難しいですが、1頭の場合は自宅で健康チェックも兼ねて一度測定しておくとよいですね。
飲水量を測定する際は、いつも使っている容器にあらかじめ計量カップで測り入れ、12時間後に残っている水を同じ計量カップに戻せば飲んだ量が測れますね。それを2回続けて24時間(1日)の引水量を測ります。このとき、食事の種類も考慮が必要。ドライフードであれば、そのままで問題ないですが、ウェットタイプの場合は、フード量の約70〜80%が水分です。その分も足してください。例えば80gの缶なら50〜60gの水分を足しましょう。
猫の正常な1日の飲水量は、体重1㎏あたり40〜50㏄です。例えば、3㎏くらいの体重の猫では、120〜150㏄です。これはどの年齢によっても同じです。もともと猫はガブガブと水を飲む動物ではないので、一気にたくさん飲む猫はもしかすると、腎臓病などが隠れていることがあるかもしれません。もし飲水量が1日に体重1㎏あたり60㏄以上認められる場合は、通常より多めなので、獣医師に早めに相談しましょう。
それから、季節の変化や室内の温度によっては水が蒸発するので、わずかではありますがその量も加味したいところですね。
安心して新鮮な水が飲める環境を用意
猫は腎臓や膀胱の病気が多いので、予防のためにも自由に安心して水が飲める環境を整えておいてほしいです。
ミネラルウォーターなど市販の水、特に硬水は尿路結石などの原因になる可能性も。また塩素によって殺菌されている水道水とちがい、雑菌が繁殖する確率が上がります。日本の水道水の水質はとても高いので、そのままあげてまったく問題ありません。
重視したいのは新鮮な水を用意すること。最低でも1日に2回は交換しましょう。水飲み場も1か所ではなく何か所かに用意して、いつでも十分に飲めるようにしてあげましょう。
自動で給水するものや、吊り下げるタイプのものなど、便利なアイテムがありますが、できる限り新鮮な水を与え、道具の不具合で飲めないといったことがないように注意してあげてください。
においに敏感な子は、トイレの近くは好まなかったり、食器に残る洗剤の香りが気になったりして、水場に近寄らなくなることもあります。なるべく静かで、気になるにおいが少ない状態にしましょう。
4㎏の子だと1日160〜200㏄ほど日本国内なら水道水で問題なし
宮下 ひろこ
獣医師/動物病院専任カウンセラー