水溶性、不溶性は気にしなくていい

厳密にいうと、食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に分けられます。

水溶性食物繊維は水に溶ける成分で、例えばコンブを水に漬けると出てくる、ぬめり成分などがよく知られています。

一方、不溶性食物繊維は水に溶けない繊維質の成分です。野菜などのシャキシャキした歯ごたえのある食感は不溶性食物繊維のものだといわれています。

いずれもヒトの胃や腸では消化できない成分です。不溶性食物繊維も便のカサを増やして便通をよくするといった効果がありますが、腸内細菌のエサになるのは水溶性食物繊維のほうです。

そのため、水溶性食物繊維のほうが大事だといわれていますが、両者を区別することはあまり意味がありません。

というのは、食物繊維を含むほとんどの食品は、水溶性も不溶性も両方含んでいるからです。

また厚労省の栄養摂取基準は、以前は水溶性と不溶性に分けていましたが、現在はそれをやめています。

食事から摂る食物繊維は、どちらかというと不溶性食物繊維のほうが多いのですが、一方だけを含む食べものというものはありません。

ですから、私は水溶性食物繊維が豊富な食べ物というイメージで分けないほうがよいと思います。食物繊維が豊富な野菜やきのこ、果物、海藻などを意識して摂っていれば、水溶性食物繊維も必然的に摂れるのです。

水溶性食物繊維を摂ると、酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌などのエサになり、それらの菌が増えて、腸内フローラが改善されます。というよりも、多様性のある腸内フローラになるといったほうが正しいでしょう。

酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌は、おそらく多様な菌がお互いに助け合って、お互いが生き残れるように働いていると考えられるので、そもそも1種類の菌だけを増やすエサというのは存在しません。

また酪酸菌を増やすには食物繊維を摂るしかないといいましたが、食物繊維は酪酸菌だけを増やすわけではなく、乳酸菌やビフィズス菌なども増やして、多様な腸内フローラに変わっていくと考えられています。

内藤 裕二

京都府立医科大学大学院医学研究科

教授/医学博士