人気の「IPO投資」にもチャレンジしたが…

うまくいかなかった投資の中には、IPO投資もありました。IPOとは、Initial Public Offeringの略語で、上場していない企業が証券取引所に新しく上場して株を投資家に売り出し、株式を自由に売買できるようにすることです。IPO投資は、企業が新規に上場するタイミングでその株を手に入れる投資のことで、日本語では「新規公開株投資」などといわれます。

新規上場する際には、個人投資家が証券会社を通じて上場する前にその株を買う権利を手に入れることができます。このときの価格が「公開価格」です。公開価格は、IPOをサポートする主幹事証券会社が決定するもので、適正と考えられる株価から2~3割ほど割引した価格で設定されるのが一般的です。

万が一にも売れ残るようなことがあれば証券会社が損をしてしまうので、投資家が割安感を感じる程度の価格を設定するのです。

この権利を得ることができれば、割安に設定された公開価格で株を手に入れることができます。市場で最初につく株価である「初値」は、公開価格より高くなるのが一般的なので、初値ですぐに売却すれば、多くの場合それだけで簡単に利益を出すことができるのです。

人気のIPO銘柄になると、公開価格の数倍の初値がつくケースもありました。IPO投資は大きなリスクを取らなくても大きなリターンが期待できるため、当時からとても人気があったのです。

しかし、IPO時に証券会社から配分される株数は限られています。その権利はきわめてレアで、なかなか手に入れられません。証券会社は多くの資産を投資してくれている得意客に配分するか、抽選を実施して当たった人に配分する方式をとっています。前者はある程度の資産を持っていないと難しいため、抽選に応募することになりますが、この倍率は非常に高く、なかなか当選しません。

僕は抽選にせっせと応募していましたが、初値の高騰が予想される人気銘柄の抽選にはかすりもせず、結果は落選ばかり。営業担当者がついてくれるような対面の証券会社の上客であれば、魅力的なIPOを回してもらえるのでしょうが、当時の僕にそんな資力はありません。

まれに当選することもあったのですが、うまい話はないものでそれは不人気銘柄。初めて当選してワクワクしながら上場日を迎えると、初値は公募価格を下回るまさかの「公募割れ」。せっかく当選したのに、上場した瞬間から損失を出す有様でした。

IPOであっても必ず初値で儲かるわけではなく、銘柄の成長性が乏しくて人気がなかったり、大型の上場のために売り出す株式数が多すぎたりする銘柄は良い初値がつかず、公募価格を割ってしまうこともあるのです。

人気銘柄に当たればかなりの確率で儲かるけれど、そもそも抽選に当たりません。IPO投資も結局は、実現可能性に乏しいのだとがっかりしていたころに出会ったのが、「IPOセカンダリ投資」でした。IPOセカンダリ投資は、当選しなくてもIPO銘柄に投資できる手法です。

今振り返れば、この手法が僕に最もフィットする投資だったのでしょう。この手法に出会って以降、10年以上にわたってパッとしなかった僕の投資パフォーマンスは、突然うなぎのぼりに上昇を始めたのです。