愛猫に歯磨きをしようとしても嫌がられる……そもそも歯磨きは必要? 良い方法は他にはないのか? など猫のデンタルケアについて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。猫の歯磨きが必要な理由から多様化するデンタルケアまで、著書『獣医さん、聞きづらい「猫」のことぜんぶ教えてください!』(日東書院本社)より、宮下ひろこ氏が解説します。
歯周病から全身疾患に⁉愛猫の健康を守るためには「歯磨き」が重要…おやつ・おもちゃ、サプリなどの広がる選択肢【獣医師が解説】
歯みがきおやつや、歯みがきおもちゃを使ってみる
とはいえ、歯みがきが苦手な猫にはどうしたらよいでしょうか?
口の中に食べ物が残ると口腔内の環境が悪くなるので、やわらかいパウチのごはんよりも、カリカリのドライフードのほうが食べかすが残らずおすすめです。
歯みがきおやつを与えたり、布製の嚙めるおもちゃを使ってみるのもよいでしょう。ただ、決まった歯だけを使うので歯みがき効果はそう高くありません。
歯みがきおやつはサイズや形状によっては、丸飲みしてしまい、食道に詰まってしまう危険があるので注意が必要です。丸飲みしてしまっては、それこそデンタルケアとしての効果はゼロ。
棒状のものや大きなサイズのものは、小さいサイズに嚙み切れるように手に持ってサポートしてあげてください。またすでに歯が悪くなっている場合、かたいおやつは逆効果なので要注意。
歯周病が悪化している場合は獣医師に相談を
歯みがきは子猫のうちから、あるいは歯が健康なうちから始めるにはよいですが、すでに歯周病が悪化している場合、刺激を与えると痛いことがあり、食欲不振にもつながるのでやみくもに進めるのはやめましょう。
例えば口周りを触るのを嫌がる、口臭がひどい、歯が茶色っぽく変色している、歯茎が赤く腫れているような場合は歯周炎や口内炎がある可能性が高いので早めに獣医師に相談してください。
歯石除去をしたほうが口腔内の細菌の増殖を抑えられ、残っている歯を守ることができます。
抜歯という選択肢
歯槽膿漏となり、歯の根っこの部分がグラグラしているような重度の場合は、抜歯を勧められることもあると思います。
歯を抜くのはかわいそうに感じる人がいるかもしれませんが、猫は嚙んで食べるよりも飲み込んで食べる動物です。残しておくことで口腔内の炎症が広がり、あごの骨にまで影響を与えて骨折してしまうということにもなりかねません。全抜歯による生活への支障はほとんどないといわれ、むしろごはんをもりもり食べるようになったなど、よい話のほうを耳にします。
ただし、歯石除去や抜歯は全身麻酔となり、そのための事前検査も必要になります。腎臓や肝臓に疾患があるとリスクが高まるため、事前検査から行ってくれる病院での処置をおすすめします。