頑固な父のこだわりを受け継ぎ、パスタもパフェも一から仕込む

現在、店を切り盛りするのは、父の跡を継いだ2代目マスター・耕一さん。平日は朝から晩まで営業時間が長いため従業員の手も借りながら、母・栄子さんや姉や甥、家族総出で営業を続けてきた。

「父には出来合いのものを出すのを良しとしない頑固なこだわりがありました。スパゲティのミートソースは1から仕込みますし、チョコレートパフェのチョコレートソースも手作りです。やむを得ず冷凍食品を使うことがあっても、必ずどこかにオリジナルのものを加えます」と耕一さん。そのため仕込みに時間がかかり、毎朝始発の電車で出勤している。

プリンだけで3時間半…もっとも手間暇をかける「プリン・ア・ラ・モード」

中でも、もっとも手間をかけているのが、不動の人気メニュー「プリン・ア・ラ・モード」の主役となる、ほんのりラム酒が利いたプリン。卵、牛乳、砂糖を混ぜて下ごしらえを行い、オーブンで焼いて、蒸らし、それから冷やす。1個のプリンの完成までに3時間半かかるというから驚きだ。

仕込みに時間がかかるプリンは、先代から教わったやり方を貫く。 撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
仕込みに時間がかかるプリンは、先代から教わったやり方を貫く。
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋

キッチンが小さな分、1日に作れる量も限られていて、夕方には売り切れてしまうことも多い。プリン、アイスクリーム、生クリームとともに、コルトンディッシュに盛りつけられるフルーツも、バナナ、メロン、ウサギ形のりんごは、丁寧にカット。

さらに、黄桃、みかん、パイナップル、さくらんぼをバランスよくのせて、あまい宝石箱が完成する。

これが、創業当時から付き合いのあるコーヒー豆の卸会社が店のためにブレンドする豆を使い、ハンドドリップで淹れる濃厚なコーヒーと実によく合う。

どこから食べるか迷うほど、フルーツや生クリームがたっぷり盛られたプリン・ア・ラ・モード。 撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
どこから食べるか迷うほど、フルーツや生クリームがたっぷり盛られたプリン・ア・ラ・モード。
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋

「ここ数年は、昔ながらの固めのプリンと紹介いただくことが多いのですが、私としては父から受け継いでいるやり方を続けてやっているだけなんです」。カウンターの中からそう話す耕一さんの手は、決して休むことがなかった。

撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋

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JR「新橋駅」より徒歩約1分

住所:東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館B1

TEL:03-3573-2156

営業時間:8:00~20:00(月~金曜)※L.O.19:30

11:00~17:30(土曜)※L.O.17:00

土曜は途中休憩あり。材料切れで早く閉店する可能性あり。

                定休日:日曜・祝日

                http://www.shinbashi.net/shop/200602


甲斐 みのり
文筆家