若者のレトロブームで、昨今再び注目を集めている喫茶店。なかでも、アルコールがメニューになく存分にコーヒーを楽しめる喫茶店のことを「純喫茶」といいます。旅行、お散歩、買い物帰りなど、たまには喧騒を離れてコーヒーと空間に思う存分浸ってみるのはいかがでしょうか。文筆家の甲斐みのり氏が『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より、大森・新橋エリアでおすすめの純喫茶を2ヵ所紹介します。
仕事に疲れたら“駅直結のオアシス”でプリン・ア・ラ・モードはいかが?…50年以上の歴史を持つ「至高の純喫茶」2選【大森・新橋】
東京五輪をきっかけに全席禁煙へ…客層が変化し、若者も訪れるように
「珈琲亭」の名に恥じぬ数十種類のコーヒー
珈琲亭と冠するだけのことはあって、メニューに連なるコーヒーの数はかなりのもの。ストレート、ブレンド、アイス、ヴァリエーションとさまざま取り揃い、全て合わせると数十種類。サイフォンやネルドリップと、それぞれに適した淹れ方で提供されている。
すぐお向かいのパン店のパンを使ったスナックメニューや、お皿の代わりにシルバーのプレートを用いたクラシックスタイルのモーニングも評判だ。
「これでも、父が店に立っていた頃よりは、メニューの数は減っているんですよ」と、2代目マスターの宮沢孝昌さん。
少し前に、父の代から長年勤めていたスタッフが退社したことで、1、2階合わせて80席ほどの大箱を回していくのが難しくなり、しばらく2階に上がってもらうのは週末だけに限っているという。
東京2020オリンピックを機に全席禁煙にしたときは、ぐっと客が減って苦しい時期があったけれど、じょじょに客層が変化して、これまでにない若い世代が、物語の世界へ連れ出してくれるような心ときめく場所として、昔ながらの喫茶店を日常的に利用してくれるようになったそうだ。
現代の“モダンガール”も目を輝かせる「バラ」のメニュー
フラワーデザインスクールで講義を終えたあとの私が、真紅のバラの絨毯が敷き詰められた1階席でいつも味わうのは、ダッチコーヒーで作る「コーヒー・ゼリー」や、ティーカップにロイヤルミルクティーを注ぐ「ベルサイユのバラ」。それから、チョコレート風味のアイスコーヒー「モカ・フロスティ」。
どれも白いバラの花のクリームが彩る愛らしいメニューで、目の前に運ばれてくるたびに、心の中にもぱっと美しい花が開く。
かつて大森で過ごした宇野千代や村岡花子や吉屋信子、自分らしく生きるモダンガールたちも、この時代に生きていたらバラの花のメニューに目を輝かせたに違いない。そんな想像を楽しみながらゆったりと、特別な時を過ごしている。
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JR「大森駅」東口より徒歩約3分
住所:東京都大田区大森北1-36-2
TEL:03-3761-6077
営業時間:7:00〜19:00(月、火、金曜)
7:30 〜 18:00(土、日曜・祝日)
定休日:水曜・木曜