東京五輪をきっかけに全席禁煙へ…客層が変化し、若者も訪れるように

「珈琲亭」の名に恥じぬ数十種類のコーヒー

珈琲亭と冠するだけのことはあって、メニューに連なるコーヒーの数はかなりのもの。ストレート、ブレンド、アイス、ヴァリエーションとさまざま取り揃い、全て合わせると数十種類。サイフォンやネルドリップと、それぞれに適した淹れ方で提供されている。

すぐお向かいのパン店のパンを使ったスナックメニューや、お皿の代わりにシルバーのプレートを用いたクラシックスタイルのモーニングも評判だ。

「これでも、父が店に立っていた頃よりは、メニューの数は減っているんですよ」と、2代目マスターの宮沢孝昌さん。

少し前に、父の代から長年勤めていたスタッフが退社したことで、1、2階合わせて80席ほどの大箱を回していくのが難しくなり、しばらく2階に上がってもらうのは週末だけに限っているという。

時間の流れを感じさせる厨房。カウンターに積まれている銀色のプレートは、モーニングに使っている特注品。 撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
時間の流れを感じさせる厨房。カウンターに積まれている銀色のプレートは、モーニングに使っている特注品。
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋

東京2020オリンピックを機に全席禁煙にしたときは、ぐっと客が減って苦しい時期があったけれど、じょじょに客層が変化して、これまでにない若い世代が、物語の世界へ連れ出してくれるような心ときめく場所として、昔ながらの喫茶店を日常的に利用してくれるようになったそうだ。

現代の“モダンガール”も目を輝かせる「バラ」のメニュー

フラワーデザインスクールで講義を終えたあとの私が、真紅のバラの絨毯が敷き詰められた1階席でいつも味わうのは、ダッチコーヒーで作る「コーヒー・ゼリー」や、ティーカップにロイヤルミルクティーを注ぐ「ベルサイユのバラ」。それから、チョコレート風味のアイスコーヒー「モカ・フロスティ」。

どれも白いバラの花のクリームが彩る愛らしいメニューで、目の前に運ばれてくるたびに、心の中にもぱっと美しい花が開く。

木製の窓辺に飾られている個性的なティーポットは、店の雰囲気に合いそうと、宮沢さんが求めたもの。 撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
木製の窓辺に飾られている個性的なティーポットは、店の雰囲気に合いそうと、宮沢さんが求めたもの。
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋

かつて大森で過ごした宇野千代や村岡花子や吉屋信子、自分らしく生きるモダンガールたちも、この時代に生きていたらバラの花のメニューに目を輝かせたに違いない。そんな想像を楽しみながらゆったりと、特別な時を過ごしている。

JR大森駅から徒歩3分ほど。居酒屋などが立ち並ぶエリアに存在感のある看板が目を引く。 撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
JR大森駅から徒歩3分ほど。居酒屋などが立ち並ぶエリアに存在感のある看板が目を引く。
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋
撮影/鈴木康史 『愛しの純喫茶』(オレンジページ)より抜粋

<DATA>
JR「大森駅」東口より徒歩約3分

住所:東京都大田区大森北1-36-2
TEL:03-3761-6077

営業時間:7:00〜19:00(月、火、金曜)

7:30 〜 18:00(土、日曜・祝日)

              定休日:水曜・木曜