程度の違いはあれど、ほとんどの人が頭を悩ませる「親の介護」。特に離れて暮らしていると、仕事と介護の両立が難しいからと「介護離職」を決断する人もいるでしょう。しかし、その決断によって「悲惨な末路」を辿るかもしれません……具体的なシミュレーションを交えて「親の介護」の注意点をみていきます。※本記事の情報は、抜粋元の書籍が刊行された2021年7月8日時点のものです。
手取り年収600万円、貯蓄1,200万円の55歳サラリーマンが「介護離職」を決断…老後を襲う厳しすぎる現実【シミュレーション】
忘れてはいけない自分の老後…「介護離職」の悲惨な末路
自分の老後のお金を確保しておくことも大切
親を介護することになった場合、特に離れて暮らしていると、仕事と介護の両立は難しいと介護離職を決断する人もいるでしょう。
ですが、介護離職をしてしまうと、場合によっては介護が終わったあとの自分の老後資金が危なくなることがあります。
図表4は、学生の子どもが2人いる人が、55歳で介護離職して介護に専念する場合の、収支と貯蓄残高をシミュレーションしたもの。
介護費用を0円で想定しても、介護期間は妻のパート年収130万円の収入のみで、不足分は貯蓄で賄うしかありません。
その結果、介護期間中に、子どもの学費が大きくのしかかり、介護を始める前は手取り約600万円で1,200万円あった貯蓄残高が、介護期間の8年でみるみる減っていき、61歳時点で200万円のマイナスに。介護が終わった後、63歳から再就職してもマイナス分を取り戻すことはできず、85歳には1,000万円超の負債を抱える悲惨な末路を迎える結果になります。
介護が終わって、再就職するという方法もありますが、特に50代は再就職が厳しそうです。40代は53%と半数以上の人が就職できていますが、50代では38%と下がります。特に現在無業者で就職希望をしている人が50代では36%もいます(図表5参照)。
「働きながらできる」介護の仕方を考えよう
離れて暮らす親を働きながら介護する場合は、介護サービスを目一杯利用しながら介護をすることになります。
ただし、体調の急変などの対応は、公的な介護サービスで対処することは厳しいので、介護保険外の民間サービスを併用していくことになります。親の年金では資金不足ならば、この費用を子どもが負担してもよいかもしれません。
親のために使う介護費用負担を年間155万円と想定して、図表4の人が介護離職をしなかった場合、8年間で1,240万円の費用を負担したとしても、65歳時点の貯蓄残高は、1,820万円、85歳時点で1,140万円残すことができます。
また、働き方を変えて時短勤務にしたケースでは、65歳時点で1,610万円、85歳時点で730万円を残すことができます。ここまで大きく差が出てしまうのは、働き続けることで、介護離職したときと比べて、給与はもちろん、退職金や年金額も増やすことができるからです。
さまざまな事情から介護離職をしなくてはならないこともありますが、民間のサービスの活用や家族のサポートを受けるなどして、仕事を辞めずに介護をする方法を模索することは、自分の老後資金の確保するためにもとても大切なことと言えます。
角川SSCムック