新NISAをきっかけに、投資に興味を持った人は多いでしょう。しかし、よく理解しないまま投資をはじめると、大切な資産をムダに減らしてしまうリスクがあります。そこで、これから投資をはじめる人に向けて『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者でCFPの小山信康氏が、投資信託選びに欠かせない「8つの投資対象」と「2つの運用スタイル」について、メリット・デメリットを解説します。
投資信託を選ぶ前に理解しておきたい「8つの投資対象」と「2つの運用スタイル」のメリット・デメリット【CFPが解説】
投資対象を決めたら…投資信託の「運用スタイル」を選択
同じカテゴリーの資産で運用している投資信託を複数見比べてみると、その運用結果が少し異なるのが通常です。その違いの主な原因として挙げられるのが、「運用スタイル」です。
投資信託の運用スタイルは、大きく2つに分けることができます。それが「パッシブ運用(インデックス運用)」と「アクティブ運用」です。
言葉の印象から「アクティブ」の方が元気で良さそうに感じるかもしれませんが、その一般的な感覚は捨ててください。
アクティブの方が良いわけでも、パッシブの方が悪いわけでも、その逆でもありません。優劣をつけるための判断材料と考えず、異なるやり方が2種類あるだけとフラットに見てください。
パッシブ運用でも、アクティブ運用でも、多くの投資信託では「ベンチマーク」を定めています。ベンチマークを直訳すると「指標」あるいは「基準」という意味になりますが、運用する際に参考となる基準を示しておくことで、投資信託を購入する人たちにとっても、「ああ、こんな感じで値動きするんだろうな」とイメージしやすくなっています。
たとえば、国内株式で運用する投資信託であれば、「日経平均株価(日経225)」や「TOPIX(東証株価指数)」など、国内の上場株式の値動きを、ある程度まとまった単位で示しているインデックス(指数)をベンチマークとするのが一般的です。
①パッシブ運用(インデックス運用)
ベンチマークに連動することを目指して運用する方法です。たとえば、日経平均株価をベンチマークとした投資信託の場合、日経平均株価が1%値上がりすれば、その投資信託も1%程度値上がりするように運用しています。同様に、日経平均株価が1%値下がりすれば、1%程度値下がりすることを目指します。
日経平均株価に連動させる運用は、それほど難しくありません。単純に考えると、225銘柄すべての株式を買えば、日経平均株価と連動して値動きする投資信託を作ることができます。実際はそこまで単純ではありませんが、結果として、パッシブ運用は複雑な作業を減らすことができるので、信託報酬率が低くなる傾向があります。
なお、「パッシブ運用」と「インデックス運用」に若干の違いはありますが、コカ・コーラとペプシ・コーラ程度の違いなので、初心者の方は「同じようなもの」と考えて差し支えないでしょう。
②アクティブ運用
ベンチマークを上回ることを目指して運用する方法です。たとえば、日経平均株価をベンチマークとしたアクティブ運用の投資信託の場合、「日経平均株価が1%値上がりする時には1%ちょっと値上がりする、1%値下がりする時には1%まで値下がりしない」ことを目指します。
ここで、理解しておくべきことが2点あります。ひとつめは、アクティブ運用だからといって、短期的にベンチマークを大きく上回るほど極端な運用をする投資信託はほとんどないこと、そしてもうひとつ、現実的に値下がり時はベンチマークよりもやや大きく値下がりしやすいということです。
アクティブ運用では、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家が、さまざまな手法を駆使してベンチマークを上回る運用成果を目指します。そのため、パッシブ運用よりもやや信託報酬率が高くなる傾向があります。若干のコストをかけて、より高いリターンを狙っている運用をしているということです。
よって、アクティブ運用の投資信託を選ぶ際には、高めのコストに見合ったパフォーマンスを期待できるのかどうかを見極めることが大切になります。
小山 信康
CFP®
1級企業年金総合プランナー