そもそも「資産活用」とはなんなのか

「資産活用」という言葉は、みなさんも聞きなれないと思いますが、この本では「退職後の生活の満足度を引き上げるため」の行動として、次のように定義しています。

1.生活費をコントロールすること

2.長く働くこと

3.年金を効率的に受け取ること

4.運用しながら資産を効率的に引き出すこと

以上のすべてを含む包括的なアイデアで、今ある資産の寿命を延ばす賢い「取り崩し」の技術が何より重要になる、と著者の野尻氏は述べています。

現役時代と定年退職後の生活では、お金に対する考え方が異なります。それぞれ次の式で表すことができます。

■〈現役時代〉勤労収入=生活費+貯蓄・資産形成

■〈退職後〉生活費=勤労収入+年金収入+資産収入

つまり、退職後は、3つの収入の合計(これを「リタイアメント・インカム」という)で生活費をまかなうという考え方になります。

3つの収入の中で、最も柔軟性のある「資産収入」をどう増やすかが退職後の生活にとって大切だ、というのがこの本の要旨です。

人生100年時代の全体像を俯瞰した時に、とくに60代からの資産「使い切り」法が大切なのですが、多くの人は将来の生活費が不安で、資産を適切に取り崩すことができず、生活費を切り詰める方に走ってしまうそうです。それで果たして豊かで幸せな人生といえるのでしょうか?

一方、勤労収入がずっと続いている、すなわち長く働き続けていたとすればどうでしょうか。年金にプラスして少しでも勤労収入があれば、資産収入をどうコントロールするかという判断が冷静にできるのではないかと思います。

この本で野尻氏が自らも実践しようとしている結論は、できるだけ資産寿命を延ばしながら豊かな生活を送っていくために、資産の取り崩しは、たとえば年4%引き出しなど「定率引き出し」を原則とし、人生の最終段階(80歳になってから)では「定額引き出し」に切り替えるということです。

何歳まで生きるかはだれにもわからないため、最初から「定額引き出し」をするのは危険なのです。