老後資金の大きな要素を占める「退職金」。しかし、「残念な使い方をしている人が少なくない」と、ファイナンシャルプランナーである長尾義弘氏は言います。長尾氏の著書『運用はいっさい無し! 60歳貯蓄ゼロでも間に合う 老後資金のつくり方』(徳間書店)より、退職金の賢い使い方について、詳しく見ていきましょう。
勤続35年以上の大卒サラリーマンなら〈平均1,822万円〉が手元に入るが…退職金の「一時金での受け取り」を安易に選択してはいけない“恐ろしいワケ”【FPが解説】
「一時払い外貨建て保険」は、リスクの高い商品!
運用で元本が減ってしまうのを怖がる人もいます。そこで陥りやすいのが保険というワナです。保険は元本が保証されていると思い込んでいるんですね。
老後資金の運用では、「一時払いの外貨建て保険」をよく勧められます。
一時払いの外貨建て保険で謳う「元本保証」は、外貨での保証です。円で受け取った場合の元本保証ではありません。ここには為替リスクが潜んでいます。円高になったら、受け取れる金額が元本を下回ることもあるのです。
また、円から外貨に、外貨から円に替える際は、為替手数料もかかります。その他にも手数料がかかります。そのうえ、途中で解約すると、元本を大きく割り込むことも。とにかく、リスクの高い商品だと思ってください。
信託報酬の高い商品は、長期投資では失敗する
金融機関が勧める投資信託にも注意が必要です。なぜなら、販売手数料や信託報酬の高い商品が多いからです。
ネット専用の投資信託の中には、販売手数料がゼロで信託報酬が1%以下という商品もあります。老後資金は長期で運用するため、信託報酬は安いほうが有利になります。また、ラップ口座という商品もあります。これまた手数料が高く、しかも二重に手数料がかかってしまい、失敗につながりやすい商品です。
お勧め商品とお得な商品はイコールで結ばれないことを覚えておきましょう。
もし、老後資金を運用したいのであれば、次のことを心がけてください。これは運用の基本です。
ひとつは、分散投資をすること。
よく「タマゴはひとつのカゴに盛るな」と言われます。ひとつに盛ると、カゴを落としたときに全部のタマゴが割れてしまいます。けれど、複数のカゴに分ければ、ひとつを落としたとしても、ほかのタマゴは影響を受けません。これが分散投資の考え方です。
リスクを分散させるわけです。
それから、退職金の全額を一気に投資しないこと。
前述したように、退職金は余裕資金ではなく老後の大切なお金です。底値のときに投資すればいいのですが、上がり切ったタイミングだと、その後は下がっていくこともあります。多大なダメージを被ったら、目も当てられません。時間を分散しながら投資することをオススメします。
退職金での運用を考えているのであれば、退職金を年金形式で受け取り、「つみたてNISA」を利用するのもひとつの方法だと思います。
また、企業年金を生活費に充て、そのぶん公的年金を繰下げ受給するのも賢いやり方です。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー