老後資金の大きな要素を占める「退職金」。しかし、「残念な使い方をしている人が少なくない」と、ファイナンシャルプランナーである長尾義弘氏は言います。長尾氏の著書『運用はいっさい無し! 60歳貯蓄ゼロでも間に合う 老後資金のつくり方』(徳間書店)より、退職金の賢い使い方について、詳しく見ていきましょう。
勤続35年以上の大卒サラリーマンなら〈平均1,822万円〉が手元に入るが…退職金の「一時金での受け取り」を安易に選択してはいけない“恐ろしいワケ”【FPが解説】
退職金は「余裕資金」ではない
いずれにしろ、退職金はまとまった金額になります。これほどのお金をいっぺんに得る機会は、人生の中でもそうそうないと思います。
人は大金を手にすると、舞い上がってしまう生き物です。頬が緩み、気持ちが緩み、財布のヒモも緩む。景気よく使い、退職金は羽が生えたように消えていきます。
こんなふうに残念な使い方をする人の、なんと多いことか。
たしかにいろいろなことができますが、勘違いしないでください。退職金は「余裕資金」ではなく、老後生活のための大切なお金です。
定年後は大きな勤労所得はあまり望めません。再雇用では、現役時代より収入が下がることが多いでしょうし、この先働ける年数も限られています。一度資産が減ってしまうと、なかなか取り返すことが難しいのです。退職金は賢く使わなければいけません。
だからといって、運用に走るのは考えもの。もちろん、現役時代から経験していた人が、運用で増やしていくのはいいことだと思います。
しかし、ほとんど経験のない初心者が、いきなり大金をつぎ込むのはオススメできません。多くの場合、運用に失敗し、元本を減らす結果になります。
突然始めて儲けられるほど、投資は甘くありません。筆者自身、成功と失敗を何度も繰り返して経験を積んできました。そうして、ようやく運用というものがわかってきます。
週刊誌やマネー雑誌、ウェブなどでは、「退職金は運用して増やせ」とか「老後資金は運用しないとダメ!」といった記事を見かけます。ですが、それを鵜呑みにしてはダメ! 大事な老後資金を増やすどころか減らしてしまったら、元も子もありません。