本来なら息子と酒を酌み交わしつつ話したかった内容を書く。たぶん、父にその時間は残されていないし、第一、今18歳の息子が将来酒を飲む人になるのかどうかは分からない。もちろん、君は、将来、飲んでも、飲まなくてもいい。

まあ、話ぐらいは聞いておけ。

働き方のコツ、覚書

さて、ビジネスの世界にあっても、時代はゆっくりと、しかもまだら模様で変化している。そして、もちろん時代が変わっても不変の原則やコツがある。

振り返ってみると、父は昭和生まれのビジネスパーソンとしては、いくらか特異だった。12回も転職したし、副業歴も30年に及ぶ。世間で言う「働き方改革」の実証実験を行ったような職業人生だった。

だが、自己評価してみるに、私はビジネスパーソンとしては二流以下だった。現に、偉くも、大金持ちにもてっていない。父に何が足りなかったのかは、君なりに考えてみてほしい。しかし、振り返ってみるとおおむね楽しい職業人生だったし、誰にコンプレックスを持つ訳でもないし、お金が足りなかったということもない(もう少し稼いでおけばよかった、とは思うけどな)。

ここで、働き、稼ぐ上でのコツをいくつか伝えておきたい。後で考えると当たり前のことでも、気づかずにいて損をすることはよく起こる。

自分の人材価値を中心に考える

働く上での大きな考え方として、自分の「人材価値」を育て、守り、活かすことを中心にするといい。これはこれからの時代でも有効であり続ける考え方だろう。

かつてであれば、組織に帰属していることが頼りとなったが、これからの時代はそれだけでは心もとないし、不利でもある。

人材価値は、仕事の「能力」と、能力を実際に仕事に使った「実績」とで評価されて、これに、今後の「持ち時間」が加味される。数式にすると次のようになる。

人材価値=(能力+実績)×持ち時間

知識や資格など仕事の能力があっても、実際に仕事に使ったことがなければ人材として十分評価されない。能力の獲得にも、仕事の実績作りにも「時間」が必要だ。時間が関わると、プランニングが必要になり、有効にもなる。

そして、同じ能力・実績の人であれば、より若くてこれから能力を使える「持ち時間」の長い人の方が人材価値は高い。歳を取ることは、ビジネスパーソンにとってつらいことなのだ。

ちなみに、非常によく頑張っている人の場合で、人材価値のピークはだいたい35歳くらいに訪れる。