何かと変化が目まぐるしい現代社会。働き方一つとっても新しいやり方や価値観についていくのが精一杯という方も少なくないのでは? 一方で、時代が変わっても不変な原則や仕事のコツも……。65歳で今年1月に亡くなった経済評論家の山崎元さんの遺作となった『経済評論家の父から息子への手紙』(Gakken)から、お金や人生、幸せについてG60世代が子どもたちや下の世代に伝えたいことをご紹介します。
「時間」「努力」「お金」を投資すると得られる5つのモノとは?…これから社会に出るキミに知っておいてほしいこと【経済評論家の父からの手紙】
本来なら息子と酒を酌み交わしつつ話したかった内容を書く。たぶん、父にその時間は残されていないし、第一、今18歳の息子が将来酒を飲む人になるのかどうかは分からない。もちろん、君は、将来、飲んでも、飲まなくてもいい。
まあ、話ぐらいは聞いておけ。
働き方のコツ、覚書
さて、ビジネスの世界にあっても、時代はゆっくりと、しかもまだら模様で変化している。そして、もちろん時代が変わっても不変の原則やコツがある。
振り返ってみると、父は昭和生まれのビジネスパーソンとしては、いくらか特異だった。12回も転職したし、副業歴も30年に及ぶ。世間で言う「働き方改革」の実証実験を行ったような職業人生だった。
だが、自己評価してみるに、私はビジネスパーソンとしては二流以下だった。現に、偉くも、大金持ちにもてっていない。父に何が足りなかったのかは、君なりに考えてみてほしい。しかし、振り返ってみるとおおむね楽しい職業人生だったし、誰にコンプレックスを持つ訳でもないし、お金が足りなかったということもない(もう少し稼いでおけばよかった、とは思うけどな)。
ここで、働き、稼ぐ上でのコツをいくつか伝えておきたい。後で考えると当たり前のことでも、気づかずにいて損をすることはよく起こる。
自分の人材価値を中心に考える
働く上での大きな考え方として、自分の「人材価値」を育て、守り、活かすことを中心にするといい。これはこれからの時代でも有効であり続ける考え方だろう。
かつてであれば、組織に帰属していることが頼りとなったが、これからの時代はそれだけでは心もとないし、不利でもある。
人材価値は、仕事の「能力」と、能力を実際に仕事に使った「実績」とで評価されて、これに、今後の「持ち時間」が加味される。数式にすると次のようになる。
知識や資格など仕事の能力があっても、実際に仕事に使ったことがなければ人材として十分評価されない。能力の獲得にも、仕事の実績作りにも「時間」が必要だ。時間が関わると、プランニングが必要になり、有効にもなる。
そして、同じ能力・実績の人であれば、より若くてこれから能力を使える「持ち時間」の長い人の方が人材価値は高い。歳を取ることは、ビジネスパーソンにとってつらいことなのだ。
ちなみに、非常によく頑張っている人の場合で、人材価値のピークはだいたい35歳くらいに訪れる。