今からでも、断熱性能は上げられる

まず断熱材はどこにあるかというと、壁の中や床下、天井裏など、室内と室外の境界部分の通常仕上げ材に隠れて見えない場所に入っています。ということは、新築と同じ仕様に作り直そうとすれば、仕上げ材を剥がしてまたもとに戻すなどの工事も必要になり、断熱工事以外の余計な費用がかかってしまいます。しかし、リフォームはいくらでもお金をかけられる訳ではありませんから、費用対効果も考えなければなりません。

幸い、断熱性能は全部を完璧にしなければ性能を発揮できないということではなく、部分的な断熱補強工事でも、ある程度全体の性能を引き上げていくことは可能です。そこで、まずはコストパフォーマンスを重視し、できるだけ既存を壊すことなく部材の追加や交換だけでできる断熱リフォームから考えてみましょう。比較的簡易に断熱性能を追加しやすい部位に、窓・床下・天井(または屋根)の3ヵ所があります。([図表3]・[図表4])

出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋
[図表3]部材を追加・交換するだけの断熱リフォーム 出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋
出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋
[図表4]部位別断熱リフォームの方法と予算 出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋

「窓まわりの断熱リフォーム」3つの方法

窓には大きく3通りの断熱方法があります。

1つ目は「内窓」という、今あるサッシはそのままに、内側にもう一つのサッシを取り付ける方法です。内窓は樹脂でできた断熱性の高い窓で、今あるサッシとの間にも更に空気層を作ることができますので、高い断熱性能とおまけに遮音性能も期待できます。また、ただ取り付けるだけの簡単な工事ですから、窓一つからいつでも気軽に行うことができ、3通りの中では最も費用対効果の高い方法です。

とは言え、内側に窓が付くとなると開閉は二重になって不便だとか、間取り的に内開きには付けられないなどの制約が出てくる場合もあります。

そんな場合は2つ目に、「サッシそのものを交換する」という方法があります。と言っても、今あるサッシを撤去するとなると外壁も絡む大工事になってしまいますから、ここでは今あるサッシの枠だけ残し、その上に新しいサッシを被せる「カバー工法」を行います。樹脂製のフレームに断熱ガラスが入った断熱サッシに交換することで、窓の断熱性能を上げることができます。

メリットは窓の開閉が今までと同じ1回で済むということですが、デメリットは内窓より高額、今の窓寸法より一回り小さい窓になるという点です。また、お住まいの地域によってはカバー工法を採用することができない場合もありますので、事前に施工店とよく打ち合わせる必要があります。

さて、内窓もサッシ交換もできないとなれば、3つ目は今あるサッシのガラスだけを「断熱ガラスに交換する」という方法があります。

断熱ガラスというのは二枚のガラスの間に空気層や真空層などを設けて熱を伝えにくくしたもので、ガラスを交換するだけですから、こちらも簡単な工事です。金額はガラスの性能によりかなり幅がありますが、高性能なガラスになると、内窓よりも工事代金が高額になる場合もあります。

また注意点としては、サッシの枠は既存のままなので、アルミ枠の結露などは解消しません。ガラス交換の場合はガラス面が小さい窓より大きな窓の方が、より断熱効果を実感することができます。

断熱リフォームは、国家的な目標であるCO2削減や、健康維持によって医療費が削減される効果が高いことから、国を挙げて推進している事業でもあります。補助金や減税などの資金的なバックアップ制度が各種用意されていますので、これらを活用して更にお得にリフォームしていただけたらと思います。



高橋 みちる
リフォームコンサルタント
アールイーデザイン一級建築士事務所 代表