数ある暖房機器のなかで、暖房効率がもっとも高いとされているのがエアコンです。一方でエアコンは、家庭のエネルギー消費量の3割以上を占めていることから、メーカー各社には高い省エネ性能を備えた製品の開発を求められるようになっています。本稿では、エアコン暖房が高効率といわれる理由と、近年のエアコンの省エネ機能、そして家庭でできる節電のコツをご紹介します。
電気代を抑えながら高い暖房効果を実現…最新エアコンに搭載された「省エネ技術」とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

各メーカーが独自機能で省エネ性を進化

ダイキンのエアコン『うるさらX』設置画像
ダイキンのエアコン『うるさらX』設置画像

経済産業省はさらなる省エネ化を推進するため、22年5月31日に、家庭用壁掛形エアコンの冷房時エネルギー消費効率を、現在の基準エネルギー消費効率(省エネ基準)より13.8%から34.7%改善させる「新省エネ基準」を発表しました。

 

達成の目標年度は27年で、目標をクリアできた製品には家電量販店などで緑色の「統一省エネラベル」を掲示することができます。この目標基準値は、「APF(通年エネルギー消費効率)値」と呼ばれる数字で表示されます。

 

たとえば、冷房能力2.2kWhエアコンのAPF値は、従来の「5.8」から「6.6」へと13.8%、冷房能力4.0kWhエアコンのAPF値は、従来の「4.9」から「6.6」と34.7%アップしました。各メーカーはこの目標基準値をクリアするため、インバータやヒートポンプなどを改良するなど進化を重ねています。

 

三菱電機は、部屋の空気を吸い込み、ファンと熱交換器の形状を従来と大きく異なる形状にすることで、より効率的な冷暖房を可能とし、FZシリーズにおいては6年連続で省エネナンバーワンを実現しました。

 

またパナソニックは、室外機の熱を再利用する「エネチャージシステム」を世界で初めて搭載。従来は大気中に放出していたコンプレッサーから生まれる熱を再利用することで、冷房時は設定温度キープや除湿に、暖房時は霜取り対策に使用し、消費電力を抑えています。

 

パナソニックのエネチャージシステムは、大気中に放出していた熱エネルギーを有効活用することで、暖房を止めずに霜取りができる
パナソニックのエネチャージシステムは、大気中に放出していた熱エネルギーを有効活用することで、暖房を止めずに霜取りができる

 

またダイキンは、エアコンの運転時間のうち、運転開始直後の20%に大きな電力を使用し、その後80%は安定した状態を維持することに着目。安定時に節電を重視した運転を行う「節電自動運転」を搭載することで、安定時の消費電力約20%の削減を可能にしています。

 

東芝ライフスタイルは冷房時、レーダーでエアコンに一番近い人に風を送ることで体感温度を下げ、消費電力を抑える「節電冷房」機能を搭載
東芝ライフスタイルは冷房時、レーダーでエアコンに一番近い人に風を送ることで体感温度を下げ、消費電力を抑える「節電冷房」機能を搭載

 

エアコン暖房の電気代を抑えるアイデアと機能

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

さらにエアコン暖房は、使い方を意識することでも節電が可能です。

 

重要なのは、エアコンのフィルターをこまめにお手入れすること。フィルターが目詰まりすると空気を十分に取り込めず、ムダな電力を消費してしまいます。

 

パナソニックによると、フィルターを1年間掃除しなかった場合、こまめに掃除した場合に比べて25%の電力がムダになるといいます。近年は、フィルター自動お掃除機能を搭載したエアコンも増えており、お手入れが面倒な人にはおすすめです。

 

またサーキュレーターを併用することで温度ムラを抑え、暖房効率を上げることができます。

 

暖房使用時は暖かい空気が天井に溜まり、足元や生活空間の温度が上がりにくくなるため、サーキュレーターで天井に溜まった暖気を攪拌して熱ムラを解消すれば、エアコンの設定温度を下げられる場合があります。設定温度を1℃下げることで電気代を10%抑えられるとされています。

 

近年のエアコンのなかには、気流をかき混ぜるサーキュレーション機能を搭載したものもあります。

 

さらに加湿をして体感温度を上げるという方法もあります。人は同じ温度下でも、湿度が高いほうが皮膚から逃げる熱が抑えられ、体感温度が高く感じる性質があります。体感温度が上がれば設定温度を下げられるため、上と同様の理由から節電につながります。

 

なおパナソニックやダイキンのエアコンには、給水なしで加湿できる機能も搭載されています。

 

内閣府の「消費動向調査※」によると、エアコンの平均使用年数は13.2年ですが、メーカー側は標準使用期間を10年と設定しているところが多く、10年を超えると修理できなくなるケースがあります。とくに古いエアコンの中には新省エネ基準に適合しておらず、電気代が高いものもありますので、最新機種に買い換えることで快適性と電気代の安さを実感できるかもしれません。

※内閣府「消費動向調査」
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/honbun202103.pdf


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<著者>
田中真紀子

家電ライター。早稲田大学卒業後、損害保険会社を経て、地域情報紙に転職。
その後フリーとなり、住まいや家事など暮らしにまつわる記事を幅広く執筆。
出産を経て、子育てと仕事の両立に悩む中、家事をラクにしてくれる白物家電、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電に魅了され、家電専門ライターに。現在は雑誌、webにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務もこなし、テレビ・ラジオ出演も多数こなす。これまで執筆や監修に携わった家電数は1000近くに及び、自宅でも常に多数の最新家電を使用しながら、生活者目線で情報を発信している。