生活環境の変化などで現在の住まいから引っ越したいと考えたとき、賃貸であればスムーズですが、持ち家であれば、そうはいきません。ほとんどの場合、売却などの対応が必要になります。さらに、もしも借地に建物を建てている場合、対応が非常に難航し、裁判沙汰になることも……弁護士の北村亮典氏が解説します。
借地権の一部について譲渡することは可能か?
【60代男性からの質問】
私は地主から土地を借りて、その借地上に2つの建物を建てて所有しています。
一つには自分が住んでおり、もう一つは私の兄が住んでいました。
しかし、兄が亡くなったので、もう一つの建物の方は今は空き家となっています。
このままの状態ではしょうがないので、借地を分割して空き家の方の建物と一緒に第三者に売却譲渡したいと考えましたが、地主は借地の分割譲渡には承諾しない、と言ってきました。
そうなると、借地非訟手続を起こすしか無いと不動産業者から言われていますが、そもそも借地を分割して第三者に譲渡することは認められるのでしょうか?
【弁護士の説明】
借地権者がその借地を第三者に譲渡する場合、地主の承諾が必要となります。
しかし、地主が承諾をしてくれない場合、裁判所に対して、地主に代わって譲渡の許可をしてもらうための訴えを起こさなければなりません(これを借地非訟といいます。)。
この点については、借地借家法第19条により、
「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる」
と規定されているところです。
したがって、裁判所としては、その借地権の譲渡が「借地権設定者に不利となるおそれがない」限りは、借地権者が譲渡することについて許可を与えるということになります。
この「不利となるおそれ」というのは、通常は、
- 借地権を譲り受ける人(会社)が資産等が乏しく地代の支払いなどに不安がある
- 借地権を譲り受ける人(会社)が反社会的勢力である
という場合に問題となることが多いです。