3,640万円の新築マンションを契約したものの、手付金200万円を払ったあと音信不通になった買主。あらかじめ契約書で定めていた金額で違約金を請求したものの、「高すぎる」としてトラブルに発展。しかし裁判の結果、買主に対して「違約金の減額」が認められました。いったいどうしてなのでしょうか。弁護士の北村亮典氏が、実際の判例をもとに解説します。
3,640万円の新築マンション、手付金だけ払って“音信不通”の買主に違約金728万円を請求→買主「高すぎる!」と支払い拒否…裁判所が違約金の“大幅減額”を認めた衝撃理由【弁護士が判例解説】
手付金だけ払って音信不通→違約金も「高すぎ」と拒否する買主
【マンション売主からの質問】
弊社が建築した新築のマンションを3,640万円で売買契約をし、手付金200万円を受領しました。しかし、買主からは代金決済期日までに残金が支払われず、連絡も取れなくなってしまいました。
そこで、契約の解除通知をし、契約書で規定していた違約金(売買代金の2割)として728万円を請求しました。なお、契約解除後すぐに別の買主が見つかり、物件の売却はできています。
これに対して、買主側からは、「違約金が代金の2割というのは不当に高く信義則違反だ」、「すぐに売却できたのだからそんなに損害はないはずだ」などと反論を受けており、違約金の支払いを拒まれています。
買主の言い分は正しいのでしょうか。
損害賠償や違約金の額は、売買代金の「10分の2」まで
【弁護士の解説】
宅地建物取引業者が売主となる宅地建物の売買契約では、契約の解除に伴う損害賠償額の予定や違約金を定めるときは、その合計が売買代金の額の10分の2を超えてはならないという制限があります(宅地建物取引業法第38条)。
逆にいえば、売買代金の2割までであれば、違約金として契約で定めてもいい、ということになります。
上記事例は、福岡高等裁判所平成20年3月28日判決の事例をモチーフにしたものですが、この事例では、宅地建物取引業者が売主としてマンションの売買を行い、違約金も売買代金の2割と定めていました。
そこで、売主は、買主の代金不払いを理由として契約解除後に、違約金として契約書通り売買代金の2割相当額を請求した、という事例になります。
これに対して、裁判所は、売買代金の2割という違約金額は不当に過大であるとして、手付金と同額の200万円に減額するという判断をしました。
裁判所はなぜこのような判断をしたのでしょうか。