お金より大切なものは目に見えない

人生で大切なものは、目に見えないものです。

小学校の卒業文集に載っていた先生たちの贈る言葉で、今でも覚えているものがひとつだけあります。「空気や音楽など、目に見えないものを大事にしよう」。

正確な文言は忘れましたが、こんな言葉のあとに、横笛を吹いているイラストが添えられていました。

これを見たとき、「なるほどね。確かに空気や音楽は、ないと困るよね」と思いました。先生の言葉に、妙に納得したことを、今も覚えています。

言われてみると、人間関係、愛情、友情、気遣い、眼差し、想像力、ゆったりと流れる時間、楽しい時間、穏やかな気持ち、達成感、自由。皆、目に見えません。

どれも大事ですが、目に見えない分、わかりにくいし、あるのが当たり前だと思いがちです。普段忙しく暮らしていると、こうしたものの素晴らしさになかなか気付きません。代わりに、目に見えるわかりやすい物を追い求めてしまうのです。

かつて私はたくさん物を買い、部屋に置いていました。「かわいいな」「素敵だな」と思う気に入ったものをたくさん持てば幸せになれると、なんとなく思っていました。

ところが、お気に入りであるはずの物をたくさん揃えても、気持ちは満たされませんでした。私が本当に求めていたのは、物ではなく、その物を手に入れると起こりそうな生活だったからです。

物を買うことで実現したかった生活を考えてみると、その暮らしには、目に見えない、いいものがたくさんありました。温かい人間関係、楽しい時間、満ち足りた気持ち、自由な毎日。

物を買っても、そうしたものは手に入らないのに、買い続けていました。