自由に使えるお金が多いと、贅沢しているつもりがなくても、知らず知らずのうちに生活水準が上がってしまうものです。特に“おひとりさま”であればなおさらのこと。そこで今回、石川亜希子AFPが59歳Aさんの事例をもとに、定年直前から年金受給開始までにできる「資産形成の方法」について解説します。
手取り月収35万円の59歳サラリーマン「76歳で破産」の未来に戦慄…定年直前に一念発起して、6年間で貯めた「驚きの貯金額」【FPが解説】
9万円の余剰資金で「資産形成」を始めることに
こうして、改善されたAさんのいまの支出は以下のとおりです。
■家賃……12万円
■食費……5万円(外食を含む)
■光熱・水道費……1万円
■通信……1万円
■保険……2万円
■日用品……1万円
■趣味……5,000円
■お小遣い……3万円
■支出合計……25万5,000円
これで、毎月9万円ほど残ることになります。
FPからは、支出を整えたのち、余剰資金での資産形成を勧められました。
資産形成の方法にもいくつかありますが、AさんはFPのアドバイスをもとに、簡単にできる資産形成として「投資信託」と「ふるさと納税」を始めることにしました。
まずはNISAで投資信託の積み立てを始めました。あればあるだけ使ってしまうAさんには、毎月自動で積み立てるシステムが向いているそうです。
また、ふるさと納税は寄附額から2,000円を超える部分が所得税と住民税から控除されるので、手取りが増えることになります。各自治体の返戻品は魅力的なものが多いですが、Aさんはトイレットペーパーなどの日用品や、お米など日持ちするものを選び、節約につなげることができています。
59歳からこうした生活を始め、65歳まで続けたAさん。年金受給開始までの6年間で1,000万円の金融資産を増やし、総資産を3,500万円とすることができました。
家計改善で「思わぬ効果」も
資産が増えただけではありません。節約のために自炊し、ジムの代わりにジョギングを始めたことで生活習慣が整うようになり、健康診断の数値も格段によくなりました。
体が軽くなったことで、65歳以降も働いてみようという意欲も湧いてきました。以前より将来への不安も減り、家計の見直しは一石二鳥どころか、たくさんの思わぬ効果があったようです。
◆まとめ
あればあるだけ使ってしまい、「お金がない」といつも思っていたAさんでしたが、家計の見直しをきっかけに、金融資産を増やすことに加えて、健康的な生活を送ることができるようになりました。
とはいえ、いまの生活スタイルだと家賃が高すぎるなど、まだ検討しなければならない面もあります。それでも、いまのAさんは自身の家計をきちんと把握できていますから、ただ不安に思うだけでなく、行動に移していくことができるでしょう。
家計を整えることは、家計に留まらず、人生全体を整えることにつながっていきます。まずは自分の支出を可視化するところから始めてみましょう。
石川 亜希子
AFP