家族の死は大変つらく、悲しいものです。そして、遺された家族は悲しむ暇もなく「死後の手続き」に追われます。その際、専門家にお願いするか自ら手続きするか迷う人は少なくありません。そこで、『親を見送る喪のしごと』の著者で作家・エッセイストの横森理香氏が、親が亡くなってから必要な諸対応とその費用について、司法書士に話を聞きました。みていきましょう。
相続手続きにかかる費用「専門家へ依頼」と「自ら対応」はいくら違うのか【司法書士に聞いてみた】
「いっぺんにもらう」は不可能…「除籍謄本」取得までの長い道のり
生命保険やら遺族年金やら、いろいろな受給に必要な除籍謄本だが、亡くなった人が生まれてから死ぬまでに在籍していた一連のものが必要となる。郵送で遠方の役所に戸籍を請求する場合、決して「何通必要になりますか?」と聞いてはいけないという。それは、役所としては「答えてはいけないこと」になっているらしい。
「除籍謄本を郵送で取り寄せるには申請してから1週間ぐらいかかるので、遠方だったりした場合、いっぺんに必要分ほしいところじゃないですか。でも、ダメなんです」
もし故人が、いろいろなところを転々としていた場合、住所と一緒に本籍まで転々と移動していると大変なことになる(相続には出生から死亡までの戸籍が必要)。
「郵送で取り寄せることも可能なんですが、除籍謄本1通につき、定額小為替750円、手数料200円がいちいちかかるんです」
郵便局で定額小為替750円を手数料200円で買って、封書にて各役所に送って依頼する。除籍謄本は1通750円、場合によっては戸籍法改正以前の戸籍「改製原戸籍」謄本も必要となる。
「ちなみに、改製原戸籍謄本は1通750円・戸籍謄本は1通450円です。明治5年に戸籍法が施行されて以来、大体どこでも5回戸籍簿の改製が行われており、平成でも改製しているので、改製原戸籍が必要になるケースがあります」
還付を希望すればコピーや原本を返してもらえることも
何通も除籍謄本(改製原戸籍謄本・戸籍謄本)を取って、役所に提出したものは返してもらえない。
返してもらえるのは、保険会社と銀行だけと聞くが、「年金用に提出したものは返してもらえませんが、法務局・裁判所・税務署に提出したものは、原本還付を希望すればコピーを提出して原本は返してもらえます。
また、国民健康保険・社会保険などに加入していた方がもらえる葬儀費用の補助金申請に添付する除籍謄本や住民票も、原本を返してもらえます」ということだ。
故人の「出生から死亡までの戸籍」の集め方
①故人が亡くなった最後の本籍地の役所で、現在戸籍をとる。「出生から死亡までの戸籍を取れるだけください」と伝えるのがポイントです。
②1つ前の本籍地で戸籍をとる。この作業を繰り返します(戸籍には必ず一つ前の本籍地が記載されています)。わからないときは窓口の担当者に相談を。
横森 理香
一般社団法人日本大人女子協会 代表
作家/エッセイスト