リアル空間とほぼ同じ世界をデジタル上に構築し、そこでシステム運用のすべてをリアルに稼働させることを指す「デジタルツイン」。ドイツの自動車メーカーBMWとメルセデスが生産工場に、Amazonもスマート物流工場にこれを本格導入したことで話題になっています。「デジタルツイン」には、ライン変更やロボットのトレーニング、人員の効率的な配置の実現など利点は多く、「DX」の本質の1つともいわれています。「デジタルツイン」の現状と、導入によるメリット、そして未来について解説します。
現実世界の環境をデジタル世界で再現「デジタルツイン」BMWやメルセデスも積極導入する、最新テックのメリットと将来性 (※写真はイメージです/PIXTA)

「DX」の本質と「インダストリー4.0」構想

 
 

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が巷に溢れていますが、その本質は本当に実践されているのでしょうか。DXの本質は「コネクテッド」と「シミュレーション」です。デジタル化によって情報が共有され、販売から製造まで、部品の在庫管理や発注、流通などもサプライチェーン全体で多くの業務を繋ぐ(コネクテッド)ことで自動化・効率化しようという構想こそ、2011年にドイツが発表した産業政策「インダストリー4.0」です。個人の好みに合わせたカスタマイズと大量生産の融合「マスカスタマイゼーション」の実践です。


当時「インダストリー4.0」構想を初めて耳にした人の多くが「そんなことは実現できるわけがない」「夢物語だ」と感じたことでしょう。構想発表から10年以上経過した今はどうでしょうか。あらゆるモノと人、システムがIoTとネットワークによってつながり始めています。

 

集めたデータを共有し、現実世界で収集したデータをサイバー空間でAIが分析し、仮想モデルと推論を作成、様々なシミュレーション結果を算出し、それを現実世界へフィードバックします。現実世界では重労働や繰り返しの作業、搬送作業はロボットが代用します。


これこそが「インダストリー4.0」であり、DXの本質です。そして、「コネクテッド」と「シミュレーション」を実現する世界が「デジタルツイン」と考えられています。


デジタルツインは本物そっくりの仮想世界を作ることが必須というわけではありません。デジタルツインの規模の大小はあっても、AI、IoT、ロボット、自動搬送車、人員の効率的な配置等を運用するプラットフォームの構築が重要で、企業の将来にとって重要なキーワードとなっています。しかし、日本国内ではそれに気づいている経営者やプロジェクト責任者はまだ多くはない、というのが現状ではないでしょうか。


 

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神崎 洋治
TRISECInternational代表取締役


ロボット、AI、IoT、自動運転、モバイル通信、ドローン、ビッグデータ等に詳しいITジャーナリスト。WEBニュース「ロボスタ」編集部責任者。イベント講師(講演)、WEBニュースやコラム、雑誌、書籍、テレビ、オンライン講座、テレビのコメンテイターなどで活動中。


1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、インターネット黎明期の米ベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材した頃からライター業に浸る。


「ロボカップ2018名古屋世界大会」公式ページのライターや、経産省主催の「WorldRobotSummit」(WRS)プレ大会決勝の審査員等もつとめる。著書多数。